「ポルトガルは物価が安くて暮らしやすい」と聞いても、実際に日本と比べて生活費がどの程度違うのかは分かりにくいものです。月いくらあれば安心して暮らせるかも、具体的な数字がないとイメージしづらいでしょう。本記事では、単身・カップル・家族別の月額目安に加え、住居費・食費・交通費などの内訳、都市別の違い、ビザ取得に必要な収入条件や税制までを数字ベースで整理します。移住を現実的に検討するための「いくら必要か」がつかめるガイドとして活用してください。
ポルトガルの生活費は日本と比べてどのくらい?まず全体像を把握しよう

海外移住を考え始めると、まず知りたくなるのが「毎月いくらあれば生活できるのか」という目安です。ここでは、主要な一次情報をもとに、ポルトガルの生活費の全体像を日本と比較しながら整理します。
単身者・カップル・家族世帯別の月額目安
ポルトガルの生活費は、海外送金サービスや移住情報サイトが家賃・食費・光熱費などをまとめて試算しています。これらは現地通貨(ユーロ)で示されていますが、日本円に直すとおおよその「月額いくらか」が見えてきます。
たとえば海外送金サービス Wise(wise.com)は、リスボンの生活費について「家賃を含めた単身者の平均的な生活費はおよそ1,300〜1,700ユーロ程度」と説明しています(家賃水準によって変動)。アメリカの送金サービス Remitly も、ポルトガルの生活費目安として「1人暮らしで1,200〜1,600ユーロ/月」を挙げており、おおむね同じ幅に収まっています。語学学習プラットフォーム Lottalingo も、ポルトガルの生活全体のコストについて「多くの西ヨーロッパ諸国より低く、単身者で1,200ユーロ前後から生活可能」と解説しています。複数の一次情報で数字が重なっている状況です。
これらを踏まえると、日本円でおおよそ次のようなイメージを持っておくと検討しやすくなります(1ユーロ=160円前後で概算)。
- 単身者:月約15万〜20万円(1,000〜1,300ユーロならかなり切り詰めた水準、1,200〜1,600ユーロならある程度ゆとり)
- カップル:月約20万〜30万円(2人で2,000〜2,400ユーロを目安。家賃をシェアするため、単身×2より割安になりやすい)
- 子ども1〜2人の家族:月約25万〜35万円以上(3〜4人で2,500〜3,000ユーロ程度から。住むエリアや教育費によってはさらに上振れ)
単身者の場合、Wise と Remitly が示す「1,300〜1,700ユーロ」は、日本円に直すと約21万〜27万円です。これはリスボン中心部など家賃が高めのケースを含んだ数字だと考えられます。地方都市や郊外で家賃を抑えると、賃料が300〜500ユーロ台に収まり、光熱費や食費を含めて15万〜20万円前後に落ち着くことも珍しくありません。
カップル世帯の場合は、単純に「1人分の生活費×2」という考え方ではなく、「家賃・光熱費をシェアできる」点が重要です。例えば、家賃900ユーロ・その他生活費600ユーロで1人暮らしをしている人がいるとします。この場合、2人で暮らしても家賃900ユーロは共通で、その他生活費が1,000〜1,200ユーロ程度に増えるイメージです。結果として、2人で2,000〜2,400ユーロ(約32万〜38万円)あれば、リスボンでも日本の中〜上位都市と同程度か、少し抑えた生活が可能なケースが多くなります。
家族世帯については、Wise や Remitly など一次情報サイトも「子どもの人数・通う学校(公立かインターナショナルか)により大きく変わる」と繰り返し注意を促しています。日常の生活費は抑えられても、インターナショナルスクールの学費が年間数千ユーロ〜1万ユーロ以上かかる場合もあります。教育費をどうするかで、トータルの生活費が数十万円単位で変動すると考えておきましょう。
日本(東京)との生活費比較
日本、特に東京での生活費と比べると、ポルトガルはどの程度割安なのでしょうか。ここでは、できるだけ客観的な一次統計を用いて比べます。
日本全体の家計状況については、総務省統計局の「家計調査(家計収支編)」が公式データを出しています。同調査の「二人以上の世帯」の最新結果によると、1世帯当たりの1か月間の消費支出はおおよそ28万円前後が目安です(年や物価変動で多少の上下あり)※1。これは全国平均であり、東京都心で暮らす場合は家賃などが上乗せされます。実際には30万円台前半〜中盤になる世帯も多いと考えられます。
東京都が公表している「都民のくらしむき(東京都の統計)」でも、都内世帯の生計支出は家賃・光熱費・食費などを含めて全国平均より高い水準にあると示されています。東京都の統計では、世帯主の年齢階層別・世帯人員別に1か月当たりの生計支出が細かく出ています。どの階層でも全国平均に比べて支出額が大きい傾向が続いています※2。
これらの日本側の統計と、Wise・Remitly・Lottalingo が提示するポルトガル側の生活費目安を重ねると、次のようなイメージになります。
- 日本(二人以上世帯・全国平均):月の消費支出約28万円(総務省「家計調査」)
- 日本(東京):家賃などを含めると30万円台が1つの目安(東京都「都民のくらしむき」による生計支出水準)
- ポルトガル(カップル世帯):家賃込みで20万〜30万円相当で生活可能(Wise・Remitly・Lottalingo の生活費目安を統合)
この比較から、日本全国平均と比べるとポルトガルの生活費は同等かやや低め、東京と比べると、住むエリア次第で月数万円〜10万円以上安くなる余地があると考えられます。
もちろん、これはあくまで統計上の平均や、代表的なモデルケースに基づく比較です。実際には、
- リスボン中心部か、ポルトや地方都市か
- 家賃をどの程度の水準に抑えるか
- 子どもの教育を公立中心にするか、インターナショナルに通わせるか
といった選択によって、必要な生活費は大きく変わります。
そのうえで、総務省や東京都の公的統計と、Wise・Remitly・Lottalingo など複数の一次情報を合わせて見ると、「日本の地方都市〜東京以外の政令指定都市の生活費と同程度、東京中心部よりは抑えられる可能性が高い」というイメージが、ポルトガル移住後の生活費として妥当だといえます。
※1 総務省統計局「家計調査(家計収支編)」最新結果(e-Stat 掲載統計表)より、「二人以上の世帯」の1か月間の消費支出額。
※2 東京都「都民のくらしむき(東京都の統計)」年報・月報中、「世帯主年齢階層別1世帯当たり1か月間の品目別生計支出-全世帯-」において、東京都平均の生計支出が全国平均より高い水準で推移していることが示されています。
【費目別】ポルトガルの生活費内訳を徹底解説

ポルトガルの生活費は、「トータルでは日本(特に東京)よりやや安いが、家賃はエリアによっては日本以上になる場合もある」というのが実情です。ここでは、移住準備で押さえておきたい主要な費目ごとに、一次情報をもとに相場感を整理します。
住居費(家賃):リスボン・ポルト・地方都市の相場
まず家計へのインパクトが大きいのが家賃です。Wise(旧TransferWise)の「Cost of Living in Lisbon」や、国際送金サービス Remitly の生活費ガイドでは、リスボンの家賃高騰が繰り返し指摘されています。
- リスボン中心部(1ベッド、単身〜カップル向け):1,200〜1,800ユーロ/月
- ポルト中心部:900〜1,400ユーロ/月
- 地方都市(コインブラ・ブラガなど):500〜800ユーロ/月
Wise のリスボン向け生活費ページでは、「city centre one-bedroom apartment」で約1,300〜1,600ユーロ前後の家賃データが公開されています。上記レンジと整合する内容です。国際学生向けポータル Study in Portugal も、留学生向け住宅情報の中で「Lisbon and Porto being the most expensive cities for rent」と明記しています。首都圏の家賃が全国平均よりかなり高いことが分かります。
日本側の統計と比べると、総務省統計局の「家計調査(家計収支編)」では、二人以上世帯の住居費(持家・持ち家帰属家賃を含む)が月平均で約2〜3万円台にとどまります※1。一方、ポルトガルの民間賃貸はリスボン中心部で15万〜25万円相当となるケースが多い状況です。「家を借りる」前提なら、日本の統計上の平均より負担は重くなりやすいと考えられます。
ただ、コインブラやブラガといった地方都市や郊外では、500〜800ユーロ(約8万〜13万円)で1ベッド〜2ベッドのアパートが見つかることも珍しくありません。Wise や Remitly も「rent outside city centre is significantly cheaper」と繰り返し述べています。エリア選びが生活費コントロールの最大の鍵になると理解しておきましょう。
食費:スーパーと外食の価格感
食費については、国際比較サイト Numbeo や Wise が出している品目別価格が参考になります。これらのデータによると、
- 牛乳1L:0.8〜1.0ユーロ
- パン1斤相当:1〜1.5ユーロ
- 鶏肉1kg:4〜6ユーロ
- りんご1kg:1.5〜2.5ユーロ
といった水準が一般的です。自炊中心なら月150〜250ユーロ程度を目安に考えられます。Remitly の「Cost of living in Portugal」記事でも、単身の食料品費について「around €200 per month if you cook most of your meals at home」と説明されています。本記事の目安とほぼ一致します。
外食費の目安は次の通りです。
- カフェや地元レストランのランチ:10〜15ユーロ
- 少し良いレストランのディナー:1人20〜30ユーロ
国際インターンシップ情報サイト stage.st では「食事は日本人との相性が良く、ランチも10ユーロ前後」と紹介されています。日常的な外食は日本の都市部と同程度か、やや安い印象になるでしょう。
日本の家計調査(総務省統計局)では、二人以上世帯の「食料」支出は月7万〜8万円台※1が一般的です。ポルトガルでは自炊中心+週1〜2回の外食なら、月200〜300ユーロ(約3万〜5万円)に収まるケースも少なくありません。物価上昇の影響はありますが、「家賃と違って、食費は日本より抑えやすい」という感覚でおおむね問題ありません。
交通費:公共交通と自動車
交通費は、住むエリアと「車を持つかどうか」で大きく変わります。
リスボン・ポルトなど大都市圏では、地下鉄・バス・トラムを統合した月間パスが一般的です。
- リスボン都市圏の定期券:40〜50ユーロ前後
ポルトガル政府の公共交通パス制度「Passe Navegante」などの導入により、首都圏では一定金額で広いエリアを乗り放題にできる仕組みが整っています。この点は、東京メトロと私鉄の複数定期を組み合わせる日本より分かりやすい構造です。
stage.st では「ポルトガルの交通費は日本と同程度」と説明されています。Wise もリスボンの月間交通パスを「around €40–€50」と示します。東京都の「都民のくらしむき」月報では、東京都平均の「交通・通信」支出が月約3万円前後で推移していることが示されています※2。ポルトガルの公共交通のみの支出と比べると、首都圏在住・車なしの生活では、ポルトガルの方がやや負担が軽いと見やすくなります。
自家用車を持つ場合は、
- ガソリン:1Lあたり1.7〜2.0ユーロ
- 自動車保険・税金・車検相当のコスト
などが追加でかかります。月トータルで数百ユーロかかることもあります。公共交通が発達したエリアでは、まず車なしで生活してみて、本当に必要かを判断する進め方が現実的です。
光熱費・通信費
光熱費は電気・ガス(またはオール電化)・水道が中心です。Numbeo や Wise のデータでは、
- 50〜70平米のアパート:電気・水道・暖房・ごみ処理込みで月80〜120ユーロ
という水準がよく引用されます。Remitly も「utilities for a small apartment cost around €100 per month」と説明しています。月100ユーロ前後を目安にできます。
ただし、
- 冬の暖房(ポルトガルは断熱性が低い物件が多い)
- エアコン使用の有無
- オール電化か、ガス併用か
といった条件で金額は変わります。冬場は150ユーロ近くまで上がる家庭もあります。
通信費は次のようなイメージです。
- モバイルSIM(音声+データ):月10〜20ユーロ
- 光インターネット:月25〜40ユーロ
主要通信会社(MEO, NOS, Vodafone Portugal など)の公式プランでも、光回線+固定電話+TVのパッケージは30ユーロ前後から用意されています。日本の大手キャリアと比べると、スマホ・固定回線ともに割安なケースが多くなります。
一方、日本では東京都の統計「都民のくらしむき」によれば、「交通・通信」合計で月3万円前後※2が一般的です。ポルトガルでは通信費が抑えられる分、トータルでは日本より少し軽くなる可能性が高いと考えられます。
医療費・保険
ポルトガルでは、ポルトガル国民・永住者・一定の条件を満たした居住者が公的医療システム(SNS:Serviço Nacional de Saúde)にアクセスできます。SNS の公式情報によると、
- 多くの基礎的な医療サービスは無料または少額の自己負担(co-payment)
- 一般診療の自己負担は数ユーロ〜十数ユーロ程度
とされています。日本の健康保険3割負担と比べても、自己負担は低めの水準です。
一方で、
- ポルトガル語でのコミュニケーション
- 待ち時間の長さ
といった懸念から、多くの外国人居住者は民間医療保険にも加入しています。国際保険会社や現地保険会社の商品を見ると、
- 単身者向け:月30〜80ユーロ
- 家族向け:カバー内容により月100〜200ユーロ以上
といったプランが一般的です。
日本側では、総務省統計局「家計調査」における「保健医療」支出は月1万円台が多く※1、健康保険料や公的年金保険料は別枠で給与天引きされています。そのため、純粋な医療費だけを見ると、日本の方がやや高いケースもあります。ポルトガル移住では、
- 公的医療(SNS)の自己負担:少額
- それに上乗せする民間医療保険:月数十〜百数十ユーロ
という構造になる場合が多いです。「保険込みの医療関連コスト」をどう設計するかがポイントになります。
※1 総務省統計局「家計調査(家計収支編)」最新結果(e-Stat 掲載統計表)より、「二人以上の世帯」の1か月間の消費支出のうち、「住居」「食料」「保健医療」などの主要項目の水準。
※2 東京都「都民のくらしむき(東京都の統計)」年報・月報中、「世帯主年齢階層別1世帯当たり1か月間の品目別生計支出-全世帯-」において、東京都平均の「交通・通信」支出が全国平均より高い水準で推移していることが示されています。
都市別で変わるポルトガルの生活費:リスボン・ポルト・コインブラ・地方

同じポルトガルでも、住む都市によって生活費は大きく変わります。国際送金サービス Wise は、リスボン・ポルト・コインブラ・ファロなど15都市について、家賃や食費などの生活コストをまとめています※1。「首都と地方で体感コストがかなり違う」という点がはっきり示されています。移住先を決めるうえで、都市別の特徴は押さえておきたいポイントです。
首都リスボン:利便性は高いが物価も高め
リスボンは、ポルトガルで最も生活費が高いエリアです。Wise の都市別コスト比較では、リスボンが国内で家賃・外食などほぼすべての項目で最上位クラスとなっています※1。外国人から見ると「ヨーロッパの中では中程度だが、ポルトガル国内ではトップレベルに高い」都市という位置付けになります。
- 家賃:市中心部の1ベッドルーム(単身・カップル向け)で月1,000ユーロ前後〜。郊外でも800ユーロ台からという事例が多く見られます。
- 食費:庶民的なレストランのランチで10〜15ユーロ程度。スーパーでの自炊中心でも、単身で月200〜250ユーロほどを見込んでおきたい水準です。
こうした水準は、ポルトガル全体の物価というより、「観光客と外国人移住者の集中」によって押し上げられた結果といえます。EU 統計局(Eurostat)も、ポルトガルの住宅価格と家賃が2015年以降上昇傾向にあると示しています※2。特にリスボン首都圏は上昇ペースが速い地域として言及されます。
一方で、リスボンには次のような利点もあります。
- 国際空港があり、日本を含む各国へのアクセスが良い
- 外国人向けの英語窓口がある病院や行政窓口が多い
- コワーキングスペースやIT系の仕事の機会が豊富
「生活コストは高いが、利便性とチャンスも高い」エリアといえます。年収が比較的高いリモートワーカーや、現地・外資系企業で高めの給与を得られる人に向いた都市です。
第二都市ポルト:バランスの良い選択肢
ポルトは、生活費と生活の質のバランスが良い都市として評価されています。Wise のデータでも、家賃・外食費ともにリスボンより一段低い水準にあります※1。同じライフスタイルでも、毎月数百ユーロ単位で節約できる余地が生まれやすい都市です。
- 家賃:中心部の1ベッドルームで800〜900ユーロ前後。郊外なら600〜700ユーロ台の物件もまだ見つかります。
- 食費:レストランのセットランチが8〜12ユーロ程度。リスボンよりやや安い水準です。
海外大学進学情報サイト College Council は、ポルトガル各都市の「生活費の安さ」を指標化したランキングを公表しています。その中でポルトは、「首都よりコストを抑えつつ、教育機関・仕事の機会・文化的環境のバランスが良い都市」と紹介されています※3。
ポルトには次のような特徴があります。
- 大学・研究機関が多く、若い世代が集まりやすい
- 観光都市としても発展しているが、旧市街以外は落ち着いた住宅街が広がる
- リスボンほど家賃バブルが進んでおらず、長期賃貸がまだ探しやすい
「首都ほどのコストは出せないが、仕事や教育の機会も確保したい」という層にとって、有力な候補となります。
コインブラ・ブラガ:コスパ重視ならここ
コインブラやブラガなどの中規模都市は、「コストパフォーマンス重視」で移住を考える人に向いた選択肢です。Wise はコインブラ、ブラガについても都市別に生活費データを公開しています※1。リスボン・ポルトより明確に安い水準です。
- 家賃:コインブラ中心部の1ベッドルームで600ユーロ前後から。郊外では500ユーロ台の例も見られます。
- 食費:自炊中心なら単身で月150〜200ユーロ程度に抑えやすい水準です。外食もローカルレストランなら7〜10ユーロ前後で済みます。
College Council の都市比較でも、コインブラやブラガは「学生都市」「若者に人気」といった文脈で取り上げられています。家賃の安さと日常費の低さから、全体として生活コストを低く抑えられる地域として評価されています※3。
教育面では、世界的な評価を受けるコインブラ大学をはじめ、教育機関が集まっています。
- 子どもの教育環境を大切にしつつ、生活費も節約したい
- 静かな環境でリモートワークをしたい
といった希望には、かなり合いやすいエリアです。日本の総務省統計局の「家計調査」では、住居費が家計支出の中でも大きな割合を占めることが示されています※1。ポルトガルでもこの構造は変わりません。家賃の安い都市を選ぶことが、移住後の家計安定につながります。
アルガルヴェ・マデイラ:リゾートエリアの物価
アルガルヴェ地方(ファロなど)やマデイラ島は、温暖な気候で欧州各国から観光客が集まるリゾートエリアです。Wise の都市別データによると、ファロなどの沿岸都市では次のような特徴があります※1。
- オフシーズンは家賃が比較的手頃
- 観光シーズンは短期賃貸の需要が増え、長期賃貸の家賃も上がりやすい
マデイラ島は、ポルトガル政府・自治体がデジタルノマド向けの取り組みを進めている地域としても知られています。英語サイト「Digital Nomads Madeira」などで、滞在用のコワーキングスペースや長期滞在者向けサービスが紹介されています。こうしたエリアでは、
- 観光客向け価格のカフェ・レストラン
- 長期滞在者・現地住民向けの店
の価格差が大きく、「ローカルの価格帯を把握できるかどうか」で生活費が変わりやすい点に注意が必要です。
気候や景観の良さは魅力的です。ただ、
- シーズンによる家賃の変動
- 仕事の機会が観光業中心になりやすい
といった事情があります。「完全リモートで働ける」「年金生活で定期収入がある」といった人向けの移住先と考えるのが現実的です。
※1 Wise.com「Cost of Living in Portugal」および同サイト内の都市別生活費データ。リスボン・ポルト・コインブラ・ファロなど15都市について、家賃・食費・外食費などの平均的なコストを掲載。
※2 Eurostat「Housing price statistics」および「Owner-occupied housing and rents」などの統計において、2015年以降のポルトガルにおける住宅価格・家賃の上昇傾向が示されています。
※3 College Council(海外大学・留学情報サイト)によるポルトガル各都市の生活費・学生都市ランキング。リスボン・ポルト・コインブラ・ブラガなどを対象に、家賃・日常費・学生数などを総合評価。
ポルトガル移住にかかる初期費用:渡航前に準備すべき金額

ポルトガルに移住する際は、「毎月の生活費」とは別に、渡航前〜到着直後にまとまった初期費用がかかります。ビザの種類や家族構成によって幅はありますが、多くの日本人移住者はトータルで100〜200万円程度を目安に準備していると考えられます。
ここでは、一次情報をもとに、ポルトガル移住で想定しておきたい主な初期費用項目を整理します。
引越し・渡航費用の目安
まず必要になるのが、日本からポルトガルまでの航空券代と荷物の輸送費です。
日本からリスボン・ポルトへの直行便は多くありません。ヨーロッパ主要都市での乗り継ぎ便を利用するパターンが一般的です。航空会社や時期によって金額は変わりますが、エコノミークラスなら往路片道でおおむね10〜20万円前後を見込んでおくと現実的なラインになります。
家具や大量の荷物をそのまま送ると、国際引越し費用が一気に高額になります。そのため、現地で買いそろえる前提にして、スーツケースと段ボール数箱+船便(あるいは航空便の最低限の箱数)に抑える移住者も増えています。
海外送金サービス Remitly は、海外移住前の費用について「航空券、ビザ申請、住居のデポジット、初期生活費などを含めたスタートアップコストを事前に積み上げておくこと」が重要だと説明しています(Remitly “Moving Abroad: Cost of Moving and Budgeting Tips”)。
この考え方をポルトガル移住に当てはめると、
- 航空券:1人あたり10〜20万円前後(時期により変動)
- 国際引越し:最低限の荷物に絞っても10〜30万円程度〜(量・距離・利用会社による)
といったレンジが現実的です。1人なら20〜40万円、夫婦や家族なら40〜80万円程度を、渡航・引越し関連の初期費用として見込んでおくと安心です。
敷金・礼金など住居契約時の初期費用
ポルトガルで賃貸物件を借りる際は、日本と同じように入居時にまとまったお金を支払います。ただし仕組みは日本と少し異なります。多くのケースで、「敷金(デポジット)」が家賃の2〜3か月分前払いで求められる一方、日本で一般的な「礼金」は通常ありません。
ポルトガルの住宅・家賃の動向については、EU統計局 Eurostat が「Owner-occupied housing and rents」などの統計で、2015年以降の住宅価格と家賃が上昇傾向にあると示しています※2。特にリスボンやポルトなど都市部では、家賃水準が国内平均より高くなっている点に注意が必要です。
住居契約時の初期費用は、おおよそ次のようなイメージになります。
- 家賃:リスボン中心部で1ベッドルームの場合、月800〜1,200ユーロ程度が1つの目安(Wise などの生活費データ※1を参考)
- 敷金:家賃の2〜3か月分(オーナーによってはそれ以上を求めることもある)
- 初月家賃:入居月の家賃1か月分を前払い
例えば、家賃1,000ユーロ(約16万円/1ユーロ=160円換算)の物件を借りる場合、
- 敷金2か月分:2,000ユーロ(約32万円)
- 初月家賃:1,000ユーロ(約16万円)
- 仲介手数料:不動産会社によっては家賃1か月分相当がかかる場合もある
という構成になることがあります。少なくとも家賃3か月分(約48万円)+αを、住居契約時の初期費用として見込んでおきたいところです。リスボンやポルトの人気エリアでは、家賃1,200〜1,500ユーロの物件も珍しくありません。都市部での居住を考える場合は、60〜80万円程度の住宅初期費用を準備しておくと余裕が持てます。
ビザ申請・行政手続き費用
ポルトガルに中長期で滞在するには、目的に応じたビザ(D7ビザ、就労系Dビザ、学生ビザなど)が必要です。その後、ポルトガル移民局で居住許可(レジデンスカード)の申請も行います。
具体的な手数料はビザの種類や時期により変わります。一般的には次のような費用がかかります。
- 在外公館での長期ビザ申請料
- ポルトガル入国後の居住許可(レジデンスカード)発行料
- 必要書類の取得・翻訳・認証費用(戸籍謄本、無犯罪証明書など)
- 郵送・交通費(日本国内での書類取得や領事館への移動など)
これらを合計すると、1人あたり数万円〜十数万円になるケースが多くなります。
日本側の統計を見ると、日本人世帯の家計に占める「諸雑費」や「手数料」の比率は決して小さくありません。総務省統計局の「家計調査(家計収支編)」では、1世帯あたりの年間支出を細かく分類しています※。日常生活でも各種手数料が積み重なっている実態が数字で示されています。海外移住の手続きでも構造は同じです。「1件ごとの金額は大きくなくても、トータルすると無視できない支出」になる点は意識しておきましょう。
総務省統計局は家計調査について、「全国の世帯を対象として家計収支等を毎月調査し、家計収支の実態を明らかにすることを目的とする」と説明しています。食費や住居費に加えて諸雑費なども含めた詳細な品目別支出を公表しています※。
こうした日本の家計構造を踏まえると、海外移住の初期費用を考える際も、ビザ関連だけで少なくとも5〜15万円程度のバッファを見込むのが現実的といえます。
生活立ち上げ費用(家具・家電・日用品)
現地到着後、すぐに生活をスタートさせるには、家具・家電・寝具・キッチン用品・日用品などの「生活立ち上げ費用」も必要です。
ポルトガルには、ベッドやソファ、テーブル、冷蔵庫、洗濯機などが備え付けられた「家具付き物件(furnished)」も多くあります。こうした物件を選べば初期投資をかなり抑えられます。一方、家具なし物件(unfurnished)の場合は一から買いそろえる必要があり、10〜20万円以上の出費となることも珍しくありません。
東京都の「都民のくらしむき(月報)」では、都民の1か月あたりの生計支出を品目別に公表しています。家具・家事用品のような耐久財は、一時的な支出が大きくなる傾向が確認できます※。海外移住でも同じ構造で、引越し直後に支出が集中し、その後は月々の負担が減るタイプの費用と考えられます。
東京都は「都民のくらしむき(年報)」で、1世帯あたり1か月間の品目別生計支出を公表しています。家具・家事用品など耐久消費財の支出が月ごとに大きく変動する実態が示されています※。
こうした日本の家計統計も踏まえると、ポルトガル移住の生活立ち上げ費用としては、
- 家具付き物件の場合:5〜10万円程度(足りないものの買い足し分)
- 家具なし物件の場合:10〜30万円程度(家具・家電の一式購入)
を1つの目安にできます。加えて、
- 食品・日用品のまとめ買い(1か月分):3〜5万円
- 通信・SIMカード・家のインターネット契約などの初期費用:数千円〜数万円
といった「細かいが確実に発生する支出」も合算しておきたいところです。
これらを総合すると、おおよそ次のようなイメージになります。
- 航空券・引越し:20〜80万円
- 住居初期費用(敷金+初月家賃など):40〜80万円
- ビザ申請・行政手続き:5〜15万円
- 生活立ち上げ費用:5〜30万円
単身でも合計100万円前後、家族帯同なら150〜200万円程度を「ポルトガル移住の初期費用」として準備しておくと、想定外の出費にも対応しやすくなります。毎月の生活費に加え、この初期費用分をどこまで貯蓄できるかが、移住計画全体の実現性を左右するポイントになります。
※ 総務省統計局「家計調査(家計収支編) 調査結果」。全国の世帯の家計収支を対象とした公式統計。
※ 東京都「都民のくらしむき(年報・月報)」。都民の1世帯あたり1か月間の品目別生計支出を公表する統計資料。
ポルトガルの生活費を日本の主要都市と数字で比較する

ポルトガル移住を検討するうえでは、「日本と比べてどれくらい生活費が違うのか」を数字で把握することが重要になります。ここでは、日本側は総務省や東京都の公式統計をベースにし、ポルトガル側は現地相場をユーロ建てで整理したうえで、日本円に換算して比較します。
※ 日本側の数値は総務省統計局「家計調査(家計収支編)」(二人以上の世帯の月平均消費支出)および東京都「都民のくらしむき(東京都生計分析調査)」の公開データをもとにした概算です。
東京・大阪との月額生活費比較表
ここでは、夫婦+子ども1人(計3人)程度を想定した「二人以上世帯」のケースで、東京・大阪と、ポルトガル(リスボン/地方都市)の月額生活費を比較します。為替レートは 1ユーロ=165円 の概算とします。
総務省統計局「家計調査(家計収支編)」では、全国二人以上世帯の2025年平均の「消費支出」が月30万円前後で推移しています。また、東京都の「都民のくらしむき(年報)」では、都平均の1世帯あたり1か月間の生計支出が、全国平均より高い水準であると示されています。
※参照:総務省統計局「家計調査(家計収支編) 調査結果」/東京都「都民のくらしむき(年報・月報)」
これらの統計を参考にしつつ、主要項目別のイメージを整理すると、下記のような比較になります。
| 項目 | 東京(23区)※1 | 大阪市※2 | リスボン | ポルトガル地方都市 |
|---|---|---|---|---|
| 家賃(2LDK相当) | 18〜23万円 | 12〜17万円 | 1,200〜1,600€(約20〜26万円) | 700〜1,000€(約12〜17万円) |
| 食費 | 8〜9万円 | 7〜8万円 | 500〜650€(約8〜11万円) | 400〜550€(約7〜9万円) |
| 光熱費(電気・ガス・水道) | 1.5〜2万円 | 1.5〜2万円 | 120〜180€(約2〜3万円) | 100〜150€(約1.6〜2.5万円) |
| 通信(スマホ2台+自宅ネット) | 1.5〜2万円 | 1.5〜2万円 | 60〜90€(約1〜1.5万円) | 60〜90€(約1〜1.5万円) |
| 交通(公共交通+少しタクシー) | 1〜1.5万円 | 1〜1.5万円 | 60〜90€(約1〜1.5万円) | 50〜80€(約0.8〜1.3万円) |
| 教育・教養・娯楽など | 3〜5万円 | 3〜4万円 | 200〜400€(約3〜7万円) | 150〜300€(約2.5〜5万円) |
| 合計(目安) | 約35〜43万円 | 約28〜35万円 | 約35〜50万円 | 約25〜36万円 |
※1 東京の水準は、総務省「家計調査」の全国平均に対し、東京都「都民のくらしむき」で示される都平均が高めであることを前提としています。都市部の家賃相場データも加味した概算です。
※2 大阪は全国平均(総務省「家計調査」)と関西圏の家賃相場をもとにした概算です。
この表から、次の点が読み取れます。
- リスボン中心部は家賃が高く、円換算では東京23区と同等か、それ以上になるケースが多い
- 一方で、地方都市(ポルト、コインブラ、ブラガなど)では、家賃を中心に大阪〜地方中核都市並みか、やや安い水準が期待できる
日本の公式統計が示す「平均的な都市生活」と、ポルトガルの主要都市の実勢家賃を並べてみると、「ポルトガル=なんでも安い」という単純な構図ではないことが分かります。
物価水準の差が大きいカテゴリ・小さいカテゴリ
ポルトガルと日本を比べた場合、カテゴリごとの「高い・安い」の差がどこに出やすいかも、生活費シミュレーションでは重要なポイントです。
差が大きい(ポルトガルの方が安く感じやすい)項目
- 外食・カフェ
地元向けレストランの日替わりランチ(”Prato do dia”)は、飲み物込みで8〜12ユーロ程度が一般的です。家族で外食しても、日本の都市部チェーン店より体感的に安く済む場面が多くなります。 - ワイン・ビールなどアルコール類
スーパーで買うワインやビールは地場産が豊富で、日本よりかなり割安です。日常的な「1本〜2本」の出費は、日本の感覚で計算するより軽く感じることが多くなります。 - 生鮮食品の一部(野菜・果物・魚)
市場やローカルスーパーをうまく使えば、季節の野菜や果物、魚介類は、品質に対するコストパフォーマンスが高いと感じるケースが目立ちます。
差が小さい、もしくは逆に高く感じる項目
- 家賃(リスボン中心部・人気エリア)
すでに見たように、リスボンや観光地では需要過多により家賃が高騰しています。東京23区以上の負担になることも珍しくありません。 - 輸入品・日本製品
日本食材、日本メーカーの家電・日用品、特定ブランドのベビー用品などは、日本より高くなる場合が多いです。輸送コストや関税の影響もあります。 - 私立校・インターナショナルスクール
公立校や国際バカロレア対応の一部校を除き、月額数百〜1,000ユーロ超の学費がかかる学校も多くなります。日本の私立と比べても、決して安いとは言い切れません。
日本の家計構造を見ると、総務省統計局「家計調査(家計収支編)」の用途分類において、食料・住居・光熱・交通・教育・教養娯楽などが主要な支出項目として整理されています。ポルトガルでも同じようなカテゴリーに支出が分かれます。「どの項目で大きく差が出るのか」を、日本側の支出構成と照らし合わせて検討しておくとよいでしょう。
円安が生活費に与える影響と為替リスク
ポルトガルの生活費を考えるうえで、見落とされやすいのが為替レートです。ユーロ建てで見れば生活費は変わらなくても、円安が進めば、日本円ベースの負担額は大きく動きます。
総務省「家計調査(家計収支編)」では、消費支出を日本円ベースで長期的に時系列比較できるよう整備しています。一方で、海外移住者はユーロ建ての支出を、円収入や円建て資産からまかなう場合も多くなります。為替レートの変動が、実質的な生活費に直接影響する点に注意が必要です。
具体的なイメージとして、リスボンでの2LDK家賃 1,400ユーロを例にとります。
- 1ユーロ=130円のとき:1,400€ × 130円 = 18.2万円
- 1ユーロ=165円のとき:1,400€ × 165円 = 23.1万円
為替レートが変わるだけで、同じ家に住んでいても、日本円ベースの家賃負担が月あたり約5万円増える計算です。これは、総務省「家計調査」で示される全国平均の「住居費」に相当する支出額そのものが、為替だけで1〜2倍近く変わり得るという意味でもあります。
円安リスクを前提に計画を立てるなら、次のような対策が考えられます。
- 日本円収入だけに依存せず、一部でもユーロ建て収入を持つことを検討する
- 家賃・教育費など「固定費」を、円安が進んだ場合でも耐えられる水準に抑える
- 生活費シミュレーションは、1ユーロ=160〜170円程度の「厳しめレート」でも成り立つかを試算しておく
日本の家計統計が示す「国内での生活費」と比べる際も、為替をどう想定するかで結論が変わります。移住前に複数パターンで試算しておくと、判断しやすくなります。
ポルトガルで生活費を抑えるための節約術・賢い暮らし方

地元スーパーとマーケットを使いこなす
ポルトガルは外食も比較的安く抑えられます。それでも長期滞在や移住では、生活費を抑えるために「自炊メイン+ときどき外食」というバランスが現実的です。どこでどのように食材を買うかによって、食費は体感で2〜3割ほど変わることが多くなります。
ポルトガル統計局(INE)が公表する家計調査では、世帯支出の中で「食品・ノンアルコール飲料」は約14%前後を占めるとされています(INE, Inquérito às Despesas das Famílias 2022/2023)。移住者が外食・カフェを増やすと、この比率は簡単に上振れします。そのため、日常的には次のようなディスカウント系スーパーと地元市場(メルカド)をうまく使い分けるのがおすすめです。
- ALDI(アルディ)・Lidl(リドル)・Pingo Doce・Continente などのチェーンは、プライベートブランド(PB)商品が安めです。ヨーグルトやチーズ、冷凍野菜、パスタなどの常備品は、ここでまとめ買いすると単価を下げやすくなります。
- 各社アプリやメンバーズカードの割引が強力です。Continente Card や Pingo Doce Cartão などを使うと、レジでの即時割引に加え、次回以降に使えるバウチャーが付くこともあります。
- 地域のMercado Municipal(市立市場)では、野菜・果物・魚介をスーパーより安く、かつ新鮮な状態で買えることが多くなります。夕方近くにはまとめ売りや値引きが出ることもあります。
欧州委員会が公開する消費者物価の比較ツール Eurostat – HICP でも、ポルトガルの食品価格水準はEU平均よりやや低めです。同じ国の中でも「スーパー+市場」を組み合わせるかどうかで、月の食費が変わってくる実態があります。
X(旧Twitter)では、52歳で退職し家族で海外生活を続ける投資家が「『仕事を辞めたら、生活費はどうするんだ?』と尋ねる人もいるだろう。投資家にとっては、そんな心配は全く必要ないと言いたい」と投稿しています(@Me56309417Me)。資産収入があるかどうかで生活費への向き合い方は変わります。労働収入を前提とする移住では、日々の食材コストを丁寧に抑えることが、結果として「働き方の自由度」を高めることにもつながります。
日常の工夫としては、次のような点を意識するとよいでしょう。
- 肉や魚はグラム単価を必ず比較し、まとめ買いして冷凍する
- パンはパダリア(パン屋)とスーパーの焼きたてコーナーを使い分け、日持ちしないものは少量ずつ購入する
- カフェでのエスプレッソ(bica)は1杯1ユーロ前後と安く見えますが、1日2〜3杯が習慣になると月に50〜70ユーロほどになります。「イートインは1日1杯まで」など、自分なりのルールを決めておく
こうしたシンプルな習慣だけでも、年間ベースでは数百ユーロ単位の違いになり得ます。
公共交通の定期券・割引制度を活用する
リスボンやポルトの都市圏では、定期券を活用するかどうかで交通費が大きく変わります。ポルトガル政府と自治体が推進する PART – Programa de Apoio à Redução Tarifária nos Transportes Públicos(公共交通料金削減プログラム)によって、都市圏の定期券はここ数年で大きく値下げされました。
リスボン首都圏交通機関(Área Metropolitana de Lisboa – Navegante)の公式情報によれば、リスボン圏の主要交通機関に乗り放題の月額定期券「Navegante Metropolitano」は40ユーロです。地下鉄・バス・近郊電車などが広範囲で利用できます(詳細は AML 公式サイトの料金表を参照)。ゾーン指定の「Navegante Municipal」は30ユーロで、住んでいる自治体内で移動が完結するならこちらで足りるケースも多くなります。
ポルト都市圏の交通事業者連合 TIP – Transportes Intermodais do Porto でも、月額定期券はゾーン制ながら、政府補助により価格が抑えられています。TIP 公式サイトの運賃表では、1ゾーン・2ゾーンの定期券が低価格で提示されており、日々バスやメトロで通勤・通学する人にとって、回数券や都度支払いよりも節約効果が大きくなります。
こうした一次情報に基づくと、
- リスボン都市圏で「Navegante Metropolitano」(40ユーロ)を利用すると、週5日・1日2往復程度の通勤を想定しても、1回あたりの実質コストは1ユーロ未満になることが多い
- 都度券やチャージ式カードで乗車すると、1回1.5〜2ユーロ前後かかるため、月20往復以上するなら定期券の方が有利になりやすい
という構図が見えてきます。郊外に住んで都心に通う場合も、近郊電車+メトロを1枚の定期券でカバーできます。車を持たずに済ませれば、駐車場代やガソリン代、保険料を含めて、年間の交通費を大きく削減しやすくなります。
さらに、ポルトガル政府は低所得者や若者、高齢者向けに追加の割引も設けています。Passe 4_18(18歳以下向け)や Passe Sub23(23歳以下の学生向け)などは、通常より大きく値引きされた料金で定期券を利用できます(詳細は各都市圏交通機関の公式案内を参照)。子どもの通学がある家庭は、こうした制度を使うことで教育関連の移動コストを抑えやすくなります。
国民健康サービス(SNS)で医療費を節約する
ポルトガルで長期滞在・居住する場合、医療費は「もしものときの大きな出費」になりやすい項目です。ここをどう設計するかで、トータルの生活費の見え方が変わってきます。ポルトガルには、Serviço Nacional de Saúde(SNS) と呼ばれる国民健康サービスがあります。原則として居住者に対して低コストで医療を提供する仕組みです。
ポルトガル保健省が運営する SNS 公式ポータル(Serviços Partilhados do Ministério da Saúde – SNS)では、SNS カード(Cartão de Utente)を取得した利用者は、公立病院や保健センターでの診療について、原則として定額の自己負担(taxas moderadoras)のみで受診できると説明されています。料金は診療内容によって変わりますが、一般診療の自己負担は数ユーロ〜十数ユーロ程度に抑えられています。低所得者や慢性疾患患者、高齢者など一定条件を満たす場合には免除制度もあります(具体的な金額や条件は毎年改定があるため、最新情報は SNS 公式サイトや保健省の告示を必ず確認してください)。
欧州委員会の European Health Insurance Card(EHIC)制度では、EU/EFTA域内の一時滞在者は、現地の公的医療と同条件で治療を受けられる仕組みが用意されています。日本からの長期移住者はEHICの対象外です。それでも「公的医療制度に加入できる居住者は、自己負担を大きく抑えられる」というEU共通の考え方は、ポルトガルでも同じです。
実務的な流れは次のようになります。
- 長期滞在ビザや居住許可を取得後、居住地の保健センター(Centro de Saúde)で SNS 登録を行い、SNS番号を発行してもらう
- 日本の健康保険証のような感覚で SNS 番号を提示し、診療・検査・処方を受ける
- 高度な医療が必要な場合でも、公立病院経由であれば、自己負担は民間保険だけの場合より抑えられることが多くなる
SNS 公式ポータルの案内でも、公立医療機関は「すべての居住者に対してユニバーサルなアクセスを保証する」と明記されています。長期移住者にとって、医療費の予測可能性を高める大きな安心材料です。
ただし、ポルトガルの公立医療は待ち時間が長めになるケースも多くなります。通訳や英語対応に不安がある場合は、補完的に民間医療保険に加入しておくと、私立病院・クリニックでの迅速な受診がしやすくなります。コスト重視なら、
- 年1回の人間ドックや専門医受診は私立+保険でカバー
- 風邪や慢性疾患のフォローは SNS の家庭医(médico de família)を活用
といった複線的な利用を前提に設計すると、医療の質と費用のバランスを取りやすくなります。
日本人コミュニティ・シェアハウスの活用
住居費は生活費の中でも最も重い固定費のひとつです。リスボンやポルトの中心部では家賃の高騰が続いています。欧州中央銀行(ECB)が公表する住宅価格・家賃指数でも、ポルトガルは2015年以降、住宅価格・家賃ともに上昇傾向が続いていると示されています。単身やカップルで移住を始める場合、「いきなり広い専用アパートを借りる」と生活費のボトルネックになりやすくなります。
ここで検討したいのが、日本人コミュニティやシェアハウスの活用です。ポルトガル各地には、日本人が運営するゲストハウスやシェアハウス、日系の不動産エージェントが紹介するルームシェア物件などがあります。
- 渡航直後の数カ月だけ「お試し」で住む
- 現地の生活情報(安いスーパー・役所での手続き・学校情報など)を、先に住んでいる人から聞く
- ポルトガル語や英語に慣れるまで、日本語で相談できる環境を確保する
といった「生活のソフトランディング」に役立つケースが多くなります。
家賃という観点では、
- リスボン中心部で1人暮らし用のスタジオを借りると、ポータルサイト Idealista や Imovirtual の募集情報では月1,000ユーロ〜が珍しくない
- 郊外やシェアハウスで個室を借りると、同じポータルサイト上でも月400〜600ユーロ前後の物件が見つかることが多い
という違いがあります。単純計算で、住居費を半分近くまで抑えられる可能性があるといえます。これは、ポルトガル統計局(INE)の住宅統計が示す「家賃水準の地域差」とも整合的です。中心部の専用アパートにこだわらなければ、生活費全体を柔軟にコントロールしやすくなります。
また、日本人コミュニティは、単なる「情報源」以上の役割も果たします。
- 不要品の譲渡(家具・家電・子ども用品など)
- 共同購入(日本食材や生活用品をまとめて取り寄せる)
- 子どもの送迎やベビーシッターの相互支援
といった形で、現金の支出を伴わないサポートネットワークとして機能することもあります。SNS やコミュニティサイトで日本人グループを探し、信頼できる範囲でつながりを作っておくと、「わざわざ新品を買う必要がなかった」という場面が増えます。結果として生活費を抑えやすくなります。
もちろん、シェアハウスやコミュニティ利用には、プライバシーの制約や人間関係の相性といった課題もあります。最初から長期契約に入るのではなく、数カ月単位で試しつつ、自分たちに合った形を探る姿勢が現実的です。住居費を抑えつつ、現地のネットワークも同時に築いていくことが、ポルトガルでの安定した生活基盤づくりに直結します。
ポルトガル移住に必要なビザと収入・資産の条件

ポルトガルで長期滞在し、現地水準の生活費をまかなうには、「どのビザを取るか」によって、求められる収入・資産レベルが大きく変わります。特にポルトガル政府は、ビザ審査の際にポルトガルの最低賃金や平均賃金を基準にした収入要件を設けています。これは一次情報(政府・公的機関の資料)で明示されています。
ポルトガルの法定最低賃金は、政府広報サイト Portaldocidadao などを通じて告知されています。2024年は月820ユーロに引き上げられたと報じられています(2023年は760ユーロ)※1。ビザ種別ごとの収入要件は、この最低賃金額をベースに設定されています。「最低賃金 × 一定倍率」という形で運用されている点が特徴です。
ここでは、代表的な4種類のビザについて、収入・資産要件と生活費との関係を整理します。
パッシブインカムビザ(Dビザ)の収入要件
日本人が「リタイア移住」や「不労所得・年金ベース」での移住を目指す場合、もっとも利用されるのが、いわゆるパッシブインカムビザ(D7ビザ)です。ポルトガル移民局(旧 SEF、現 AIMA)のガイドラインでは、D7ビザについて「安定したパッシブインカム(年金、家賃収入、配当など)で生活できること」が求められています。最低賃金の年間額以上の収入証明が事実上の目安とされています※2。
Remitly のポルトガル移住ガイドでは、D7ビザの収入要件について「申請者本人はポルトガル最低賃金の100%、配偶者は50%、子どもは30%を追加で証明する必要がある」と説明しています※3。これは AIMA が運用で用いている基準と整合します。2023年の最低賃金760ユーロを基準にすると、
- 単身:月760ユーロ以上
- 夫婦:760+380=1,140ユーロ以上
- 夫婦+子ども1人:760+380+228≒1,368ユーロ以上
がひとつのボーダーラインとなります。Lottalingo も「D7ビザは最低賃金をベースとした収入証明が必要で、年金や不動産収入等が対象になる」と解説しています※4。複数の一次情報・実務解説で、この点は共通しています。
この水準を現地の生活費と比べてみます。ポルトガル統計局(INE)が公表する家計支出統計では、2022年時点の全国平均家賃は月400〜500ユーロ台のレンジが多くなっています※5。家賃を抑えれば、単身で800〜1,000ユーロ前後、夫婦で1,200〜1,500ユーロ前後で暮らす世帯も少なくありません。D7ビザの収入要件は「地方都市〜郊外なら、質素に暮らせる最低ライン」というイメージに近いと考えられます。
一方で、リスボンやポルトの中心部は、INEの住宅統計や民間ポータルサイトの家賃データが示すように、ワンルームでも800〜1,000ユーロを超える物件が多くなっています※6。このため、D7ビザの最低ラインぎりぎりだと、都市中心部での単身生活でも厳しい場面が増えやすくなります。実際には「最低ラインの1.5倍〜2倍」程度のパッシブインカムがあると安心というのが、現地で聞かれる実感値です。
デジタルノマドビザの条件と生活費の関係
2022年以降、リモートワーカー向けに新設されたのがデジタルノマドビザ(正式には D8 ビザなどのカテゴリー)です。ポルトガル政府系のビザ案内サイトや AIMA の告知によると、このビザで求められる収入要件は「ポルトガルの月額最低賃金の4倍以上」とされています※7。
Remitly の記事では、「デジタルノマドビザの申請には、過去3カ月の給与明細またはフリーランス収入の証明が必要で、その額はポルトガル最低賃金の4倍、約3,280ユーロ(2023年基準)以上」と説明しています※8。Stage.st のポルトガル移住ガイドも、「デジタルノマドビザは月3,280ユーロ以上のリモート収入を条件としている」と整理しています※9。複数の一次情報ベースの解説から、月3,000ユーロ台前半が現実的な目安と見てよい状況です。
この金額を生活費と比較すると、INEの家計調査では、都市部でも1世帯あたり消費支出が1,500〜2,000ユーロ前後に収まるケースが多くなります※5。月3,000ユーロ超の収入があれば、リスボン中心部で家賃1,200〜1,500ユーロの物件を借りても、生活費には十分な余裕が生まれます。実務上も、デジタルノマドビザの申請者は「最低ライン3,280ユーロ」に対して、4,000〜5,000ユーロ程度のリモート収入を確保し、貯蓄もしながら生活しているケースが多いとされています※9。
Lottalingo の解説では、「デジタルノマドビザは、D7より高い収入が求められる分、働きながら都市部でゆとりある生活を送りたい層に向いている」と指摘されています※4。まさに『リスボンで日本と同等かそれ以上の生活水準を維持したい人向け』のビザカテゴリと整理できます。
ゴールデンビザ(投資ビザ)の概要
資産家向けの選択肢として知られてきたのが、いわゆるゴールデンビザ(Golden Visa、投資居住ビザ)です。ポルトガル政府の投資庁(AICEP)や AIMA の情報によると、ゴールデンビザは一定額以上の投資を行う外国人に居住許可を与える制度です。最低滞在日数も年間7日程度と緩やかです※10。
Stage.st は、ポルトガルのゴールデンビザについて「かつては50万ユーロ以上の不動産投資が王道だったが、2023年の法改正で不動産投資オプションは廃止された」と説明しています※9。現在はファンド投資や企業投資、研究開発への資金拠出などに限られます。これは、2023年に成立したポルトガルの住宅危機対策法(More Housing 法案)による変更です。ポルトガル政府官報(Diário da República)にも、ゴールデンビザ制度から不動産投資が除外された旨が明記されています※11。
現在の代表的な投資オプションとしては、
- 認可ファンドへの50万ユーロ以上の投資
- ポルトガル企業への50万ユーロ以上の資本参加
- 研究開発プロジェクトへの50万ユーロ以上の拠出
といった選択肢があります。いずれも数千万円規模の投資資金が前提です※10。ゴールデンビザでは、日々の生活費について細かい収入要件は課されていません。ただし、AIMA は「投資家として自立した生活ができる資産背景」を前提としています※2。生活費の心配をする層向けのビザではないと理解しておく必要があります。
永住権・市民権取得までのロードマップ
どのビザで移住するかを決める際、長期的な視点で重要になるのが永住権(長期居住権)や市民権(国籍)までの道筋です。ポルトガル内務省が公表する外国人法(Lei de Estrangeiros)および国籍法(Lei da Nacionalidade)では、次のような基本ルールが示されています※12。
- 一般的な居住ビザ(D7、D8など)で5年以上、合法的かつ継続的に滞在した外国人は、「長期居住者ステータス(permanente)」を申請できる
- 同じく5年以上、合法的に居住し、ポルトガル語A2レベル以上の言語能力を証明できれば、市民権(国籍)の申請資格も得られる
ポルトガル政府の公式ポータル ePortugal では、「永住権とEU長期居住者ステータスの申請には、安定した収入、住居、社会保障への加入などを証明する必要がある」と説明されています※13。ここでも収入要件が生活費と密接に結び付いていることが分かります。
おおまかな流れは次のようになります※12。
- 日本でビザを申請(D7/デジタルノマド/投資ビザなど)
- ポルトガル到着後、AIMAで滞在許可カード(1〜2年)を取得
- 更新を繰り返しながら5年以上、合法的に居住
- ポルトガル語A2レベル(移民向けの公式コースや検定)を取得
- 安定収入・住居・納税実績などを示して永住権・市民権を申請
Stage.st も、「D7やデジタルノマドビザで入国し、5年間居住を続ければ、永住権・市民権申請の道が開ける」と解説しています※9。ビザの選択は、単なる『最初の入り口』ではなく、5年スパンの生活設計と直結する重要な選択です。
この観点から整理すると、次のような棲み分けになります。
- 生活費を抑えつつ、年金や不労所得で細く長く暮らしたい → D7(パッシブインカムビザ)
- リモートワーク収入で都市部でもゆとりを持ちたい → デジタルノマドビザ
- すでに多額の資産があり、投資を通じて柔軟に滞在したい → ゴールデンビザ
どのルートでも、「ポルトガルの最低賃金水準に基づく収入要件」と「実際の生活費(家賃・物価)」を照らし合わせる必要があります。自分の収入・資産がどの都市で、どのレベルの生活を現実的に支えられるかを見極めることが、移住計画の出発点になります。
※1 ポルトガル政府官報(Diário da República)、最低賃金改定法令 2023/2024 年分
※2 AIMA(前 SEF)公式サイト「Autorização de Residência para Atividade de Rendimento Passivo」ガイドライン
※3 Remitly『Moving to Portugal: Visa and Residency Guide』D7 Visa セクション
※4 Lottalingo『ポルトガル移住ガイド:ビザと収入要件』
※5 ポルトガル統計局(INE)『Household budget survey / Inquérito às Despesas das Famílias』
※6 INE 住宅統計および主要ポータルサイト(Idealista など)の家賃集計データ
※7 ポルトガル政府公式ポータル ePortugal『Residence visa for remote workers』
※8 Remitly『Digital Nomad Visa for Portugal: Requirements and Income Threshold』
※9 Stage.st『ポルトガル移住完全ガイド:ビザ・生活費・教育』
※10 AICEP / ePortugal『Autorização de Residência para Investimento(Golden Visa)』
※11 Diário da República『More Housing Law(Mais Habitação)』ゴールデンビザ関連条文
※12 ポルトガル国籍法(Lei da Nacionalidade)および外国人法(Lei de Estrangeiros)
※13 ePortugal『Long-term resident status and permanent residence in Portugal』
ポルトガルの税制と生活費への影響:NHRから新制度まで

ポルトガル移住では、家賃や食費だけでなく「税金込みでいくら手元に残るか」を押さえることが重要です。特に、2024年から税優遇制度が大きく変わりました。日本語で最新情報を整理している情報源はまだ多くありません。
ここでは、ポルトガル政府やOECDなどの一次情報に基づき、旧NHR制度と新しい税優遇制度、日本との二重課税リスク、消費税(IVA)が生活費に与える影響を整理します。
旧NHR制度と2024年以降の新優遇税制(IFICI)
旧NHR(Non‑Habitual Resident)のポイント
ポルトガル財務省(Autoridade Tributária e Aduaneira)が公表していたNHR制度では、次のような枠組みがありました。
- ポルトガルに税務上の居住者として登録し、過去5年ポルトガル税居住者でなかった人が対象
- 一定の高付加価値職種に対する給与・事業所得を、20%の固定税率で課税
- 年金や投資収入などの「外国源泉所得」について、ポルトガル国内で最大10年間の税優遇(多くは非課税または軽課税)
この仕組みは、ポルトガル税務当局の公式ガイドでも説明されていました※1。特に、外国源泉年金などが実質的に10年間ほぼ非課税となるケースがあり、欧州各国からのリタイア移住者を惹きつける大きな要因になっていました。
OECDの対ポルトガル税制レビューでも、NHRは「外国からの高技能人材や年金受給者を呼び込む制度」と位置付けられています※2。ポルトガル経済に与えたインパクトは小さくないと評価されてきました。
2024年からの見直しとIFICI
ポルトガル政府は2023年財政法(Lei do Orçamento do Estado 2024)で、NHR制度の新規受付終了を決めました。2024年以降は段階的に新しい優遇制度(Innovation Incentive for Competitiveness and Internationalization:通称IFICI)へ移行します※3。
財務省が公表した概要によると※3、
- NHRの新規申請は原則2023年末で終了(一定の経過措置あり)
- すでにNHR認定済みの人は、原則として付与から10年間は旧ルールが継続
- 新制度IFICIは、スタートアップ、研究開発、ハイテク分野など「イノベーションと競争力向上」に資する活動に焦点
- 対象となる職種・活動は限定的で、旧NHRより要件が厳格
とされています。現時点で、IFICIの詳細な適用範囲や具体的税率は、ポルトガル官報(Diário da República)掲載の法文および財務省の実務ガイドに基づき、順次整備されている段階です※3。
NHRと違い、「広範な外国源泉所得を10年間ほぼ非課税」といった優遇は想定されていません。政府の説明資料でも、そうした優遇は設けないと明言されています※3。「投資や年金を日本に残したまま、ポルトガルでほとんど税金を払わずに暮らす」という旧NHR的な発想は、今後は通用しにくくなると考えておく必要があります。
税制の変更は、生活費に直結する「可処分所得」を大きく左右します。日本からの年金・配当・不動産収入などを当てにしてポルトガルで暮らす場合、
- 旧NHR適用者:外国源泉所得への課税が軽く、手取りが増えやすい
- 新制度下の新規移住者:ポルトガル国内で課税される可能性が高まり、結果として「同じ収入でも手元に残るお金が減る」
という構図になり得ます。現地の税理士や日本の税理士と連携し、移住前にシミュレーションしておくことが欠かせません。
日本との二重課税リスクと対策
日・ポルトガル租税条約の存在
日本とポルトガルの間には、「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税防止のための条約」があります。財務省が条文と日本語仮訳を公開しています※4。条約では、
- 利子・配当・使用料に対する源泉税率の上限
- 居住地国・源泉地国の課税権の分配
- 二重課税が生じた場合の外国税額控除の方法
などが定められています。財務省の解説によれば、条約の目的は「同一の所得に対して日・ポルトガル両国で重複して課税されることを防ぎ、国際的な経済交流を促進すること」にあります※4。
実務上の二重課税リスク
条約があっても、実務上の二重課税リスクはゼロではありません。たとえば次のようなケースです。
- 日本の証券口座で受け取る配当・株式譲渡益:日本側で課税されたうえで、ポルトガルの税務上居住者であればポルトガルでも課税対象となる可能性がある
- 日本国内の不動産所得:日本での申告に加え、ポルトガル側でも「世界所得課税」の対象になる可能性がある
こうした場合、条約を踏まえてポルトガル側で外国税額控除を適用し、日本で払った税金を一定範囲でポルトガル税額から差し引くのが基本的な考え方です。OECDの「Model Tax Convention(租税条約モデル)」でも、居住地国が外国税額控除方式を採ることが、二重課税解消の標準的な方法と説明されています※5。
生活費シミュレーション時のポイント
生活費として毎月いくら使えるかを見積もる際には、次の3点をセットで確認する必要があります。
- 日本での所得ごとの税引き後金額(源泉徴収・住民税などを考慮)
- ポルトガルでの所得税・社会保険負担(NHRやIFICIの有無)
- 条約に基づく外国税額控除を適用した後のポルトガル側の実効税額
特に、日本の年金や投資収入を主な原資として生活する場合、税引き後の手取りが2〜3割変わる可能性もあります。その分だけ、「家賃にいくら回せるか」「子どもの教育費にいくら充てられるか」が変わってきます。
条約自体は公開情報ですが※4、具体的な適用可否や申告方法は個々人の状況で異なります。日本とポルトガル双方の税制に詳しい専門家に相談し、移住前に3〜5年分程度のキャッシュフロー表を作成しておくと安心です。
消費税(IVA)と日常生活への影響
ポルトガルのIVA(付加価値税)率
ポルトガル税務当局(Autoridade Tributária e Aduaneira)が公表している税率表によると、2024年時点のIVA(Imposto sobre o Valor Acrescentado:付加価値税)は次の通りです※6。
- 標準税率:23%(主に一般的な商品・サービス)
- 軽減税率:13%(一部の食品、レストランなど)
- 超軽減税率:6%(生活必需品に分類される食品・医薬品・書籍など)
税務当局の説明では、「生活必需品ほど税率を低く設定し、贅沢品・一般消費には標準税率を適用する」という考え方が採られています※6。
食費・日用品への具体的な影響
標準税率23%という数字だけを見ると「物価がかなり高いのでは」と感じるかもしれません。実際の生活費への影響は、どの品目に何%のIVAがかかっているかで大きく変わります。
- スーパーの基礎的な食料品(パン、牛乳、卵、野菜の多く)は6%または13%の対象
- ミネラルウォーターやソフトドリンク、アルコール飲料などは23%がかかることが多い
- 外食(レストラン)は軽減税率13%のカテゴリと標準税率23%のカテゴリが混在
と、税務当局の税率分類表※6に明記されています。同じ「食費」でも、外食中心か自炊中心かで、実際に負担するIVAの割合は変わります。
例えば、
- 平日は自炊メインで、週末のみ外食
- ペットボトル飲料よりも水道水+浄水器を利用
といった生活スタイルであれば、23%のIVAがかかる支出をある程度コントロールできます。税率の高さの割には生活費を抑えやすいというのが実情に近いでしょう。
日本の消費税との比較のしかた
日本の消費税率(標準10%、軽減8%)と単純比較すると、ポルトガルの23%という数字は強い印象があります。ただ、
- 食料品の多くが6%または13%であること
- 家賃には通常IVAがかからないこと
- 医療や公教育といった公的サービスの自己負担が、日本より低い場面もあること
といった点も踏まえると、「日常生活全体としてどれくらい税負担があるか」は単純には比べにくくなります。
日本の総務省統計局「家計調査」※7や、東京都の「都民のくらしむき」※8など、日本の平均的な家計支出構造を参考にしつつ、自分の支出パターン(食費・外食・交通・教育・医療など)をポルトガルのIVA区分に当てはめてみると、よりリアルな差が見えやすくなります。
まとめると、ポルトガル移住の「生活費」は次のような要素で大きく変わります。
- 所得税:旧NHRか新制度か、日本との条約の適用状況
- 社会保険:給与・年金の受け取り方
- 消費税(IVA):自炊と外食、必需品と贅沢品のバランス
家賃相場だけで判断せず、「税引き後の手取り」と「税込みの出費」をセットで比較する視点が、移住先としてポルトガルを検討する際に欠かせません。
※1 ポルトガル税務当局(Autoridade Tributária e Aduaneira)『Regime Fiscal para o Residente Não Habitual(NHR制度解説)』
※2 OECD『Economic Surveys: Portugal』税制・国際モビリティに関する章
※3 Diário da República『Lei do Orçamento do Estado 2024』およびポルトガル財務省 NHR廃止・IFICI導入に関するプレスリリース
※4 日本国財務省『日本国とポルトガルとの間の所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税防止のための条約(条文・仮訳)』
※5 OECD『Model Tax Convention on Income and on Capital(最新版)』二重課税の排除に関する条文・解説
※6 Autoridade Tributária e Aduaneira『Taxas do IVA em Portugal』税率・品目別区分
※7 総務省統計局『家計調査(家計収支編)』最新年報
※8 東京都『都民のくらしむき(年報・月報)』
ポルトガル移住でよくある疑問Q&A

月10万円台で生活できる?現実的な最低ラインは?
単身であれば「月10万円台」でのポルトガル生活は、地方都市やシェアハウスを活用することでぎりぎり可能な水準です。ただし、かなり切り詰めた暮らしになります。実際の目安を整理すると、次のようなイメージです。
- 家賃:地方都市のシェアハウスや郊外のワンルームで300〜450ユーロ
- 食費:自炊中心で150〜250ユーロ
- 光熱費・通信費:70〜120ユーロ
- 交通・雑費:80〜150ユーロ
リスボンやポルトの家賃は上昇傾向にあります。ポルトガル統計局(Instituto Nacional de Estatística)が公表する家賃指数も、この数年、右肩上がりを続けています※1。月10万円台(為替レートにもよりますが、おおむね650〜750ユーロ)で生活費を抑えたい場合は、次の条件がほぼ必須です。
- 首都圏を外した中〜小規模都市(コインブラ、ブラガなど)を選ぶ
- シェアハウスやルームシェアを前提にする
- 外食は最小限にして自炊中心にする
一方で、「日本にいたときと同じくらいの快適さ」を期待するなら、月15〜20万円(おおむね1,000〜1,300ユーロ)を見込んでおくと現実的なラインになりやすくなります。日本側の生活費感覚と比べるために、総務省統計局の家計調査年報を見ると、二人以上世帯の消費支出は月平均で約32〜33万円です※7。東京都の「都民のくらしむき」でも、都内の生計費は全国平均より高めで推移しています※8。これらと比べると、ポルトガル地方都市で月15〜20万円を確保できれば、日本の地方都市よりやや低め〜同程度の生活水準を実現しやすいと考えられます。
子連れ移住の場合、教育費はどのくらいかかる?
教育費は「どのタイプの学校を選ぶか」で大きく変わります。ポルトガルの義務教育(公立)は授業料が基本的に無料です。教科書など一部教材費と給食費、通学費が主な負担になります。
- 公立学校:授業料無料(教材費や給食費などで月数十ユーロ前後)
- 私立ポルトガル校:学校・学年によるが、月200〜600ユーロ程度が目安
- インターナショナルスクール:月600〜1,500ユーロ(年7,000〜15,000ユーロ)前後が一般的
リスボンやカスカイス周辺のインターナショナルスクールでは、初等教育段階でも年間学費が1万ユーロを超えるところが多くあります。これは公式サイトの授業料表(Tuition Fees)でも確認できます。学年が上がるごとに数千ユーロ単位で増えるケースも見られます※2。
日本語の学習を維持したい場合、日本人会や補習校が運営する日本語クラスに通わせる家庭もあります。ポルトガル国内の日本語補習校では、授業料が月50〜150ユーロ程度に設定されている例があります。現地校+日本語補習という組み合わせでも、月トータルで100〜300ユーロ前後は見込んでおきたいところです。
結果として、
- 「コストを抑えつつ現地社会に溶け込みたい」→ 公立校+日本語補習校
- 「将来は英語圏の大学進学なども視野に入れたい」→ インターナショナルスクール中心
といった形で、教育方針と予算の両面から検討する必要があります。教育費は家計の中でも比重が大きく、日本の家計調査でも「教育」の支出は子どもの年齢が上がるほど増える傾向がはっきり出ています※7。ポルトガル移住でも、子どもの成長に合わせた教育費の増加を見越して資金計画を立てておくことが重要です。
ポルトガルで働いて収入を得ることはできる?
EU圏外の日本人がポルトガルで働くには、原則として「労働を許可する滞在許可(就労ビザ)」が必要です。求人サイト経由の現地採用や、現地企業への転職を目指す場合、
- 雇用主がビザスポンサーになるか
- ポルトガル人や他のEU市民では埋められないポジションか
といった条件が問われます。ポルトガル政府やEUの就労規定に沿った手続きが必要です。
一方、近年のポルトガルは「リモートワーカー」「フリーランス」を想定したビザ制度を整えています。内務省および移民・国境庁の公表資料では、ポルトガル国外の企業に雇用されつつ、ポルトガル国内からリモート勤務することを想定した居住許可カテゴリーが案内されています※3。ITエンジニアやクリエイター、オンライン講師など、場所を問わない働き方をしている人にとって、移住しやすい環境が整いつつあります。
ただし、リモートワークであっても「実際に住む場所がポルトガル」である以上、一定の条件のもとでポルトガルの税法が適用されます。OECDの『Economic Surveys: Portugal』や、ポルトガル税務当局(Autoridade Tributária e Aduaneira)の資料でも、居住者の判定や所得課税のルールが示されています※2※6。リモートワークで日本や他国から収入を得る場合でも、
- どの国で「税務上の居住者」とみなされるか
- 日・ポルトガル間の租税条約の適用をどう考えるか
といった点を、税理士など専門家と事前に確認しておくと安心です。
医療の質は?日本語対応のクリニックはある?
ポルトガルの医療は、OECDの評価でも概ね良好です。『OECD Health Statistics』では、ポルトガルの平均寿命や医療への公的支出水準はEU平均と同程度かやや上回る水準とされています。一次医療から専門医療まで、公的医療システム(SNS:Serviço Nacional de Saúde)が整備されています※4。
公的医療を利用する場合、
- 基本的な診察料は数ユーロ〜十数ユーロ程度(所得や条件により免除もあり)
- 薬代もジェネリック医薬品を中心に比較的安価
というメリットがあります。一方、人気エリアの公立病院では予約が取りにくく、待ち時間が長くなるケースも珍しくありません。こうした事情から、都市部では私立クリニックや私立病院+民間医療保険という組み合わせを選ぶ外国人居住者が多い状況です。
日本語対応については、リスボンとポルトを中心に次のような医療機関があります。
- 日本語または英語が堪能な医師が在籍するクリニック
- 日本大使館・領事館が医療機関リストとして掲載している病院
日本国外務省や在ポルトガル日本国大使館のサイトでは、現地で日本人がよく利用する医療機関の情報が案内されています※5。渡航前に最寄りの日本語・英語対応クリニックを確認しておくと安心です。
また、日本の家計調査を見ると、医療費は高齢になるほど増える傾向がはっきり出ています※7。長期移住や老後移住を検討している場合は、
- 民間医療保険(インターナショナル保険を含む)の加入
- 慢性疾患がある場合の薬の入手方法・自己負担額
を事前にシミュレーションしておきましょう。老後の生活費の中で医療費をどの程度見込むべきか、日本での支出データと照らしながら検討しておくと、計画を立てやすくなります。
※1 Instituto Nacional de Estatística “Housing Statistics – Rents and Price Indices”
※2 各インターナショナルスクール公式サイト “Tuition & Fees” ページ、ならびに OECD “Education at a Glance” ポルトガル章
※3 ポルトガル内務省・移民関連当局(AIMA/旧SEF)ビザ案内ページ
※4 OECD “Health at a Glance: Europe” ポルトガルに関する統計
※5 在ポルトガル日本国大使館「医療情報・医療機関リスト」
※6 Autoridade Tributária e Aduaneira “Taxas do IVA em Portugal” および居住者課税に関するガイダンス
※7 総務省統計局『家計調査(家計収支編)』最新年報
※8 東京都『都民のくらしむき(年報・月報)』
まとめ
ポルトガルは、日本と比べて生活費を抑えやすい要素が多く、特に地方都市を選べば家賃を含めたトータルコストを下げやすい国です。一方で、リスボンの家賃高騰や、ビザの収入要件、税制の変化、為替リスク、教育費・医療体制など、事前に押さえておくべきポイントも多くあります。
本記事で紹介した都市別相場や費目別の目安、節約術、ビザ・税制の概要を参考にしながら、「自分のライフスタイルなら月いくら必要か」を具体的な数字に落とし込んでみてください。そのうえで、毎月の生活費と初期費用の両方をカバーできる資金計画と移住スケジュールを組み立てることが、無理のないポルトガル移住への近道になります。
よくある質問(FAQ)

Q1. ポルトガルの生活費は、円安が進んだ今でも日本より安いと言えますか?
ポルトガルの「ユーロ建て」の生活費自体は、日本と比べて今も比較的低めですが、円安の影響で「日本円ベース」では割安感が薄れてきているのが実情です。
記事中で整理した通り、夫婦+子ども1人程度を想定した場合の月額目安は次のとおりです(1ユーロ=165円前後換算)。
- 東京23区:35〜43万円程度
- 大阪市:28〜35万円程度
- ポルトガル地方都市:25〜36万円程度
- リスボン中心部:35〜50万円程度
地方都市(コインブラ・ブラガなど)を選べば、日本の地方中核都市〜大阪と同程度か、やや安い水準で暮らせる可能性があります。一方、リスボン中心部の家賃は高騰しており、為替が1ユーロ=160〜170円水準だと、東京23区と同等か、それ以上になるケースも多いです。
つまり、
- 「どの都市に住むか」
- 「家賃をどの程度に抑えるか」
- 「収入が円建てかユーロ建てか」
によって、日本より安くなるかどうかが変わります。円収入メインでリスボン中心部に住む場合は、日本と同等以上の生活費を覚悟しておいた方が安全です。
Q2. 生活費を抑えたい場合、どの都市・地域がおすすめですか?
生活費を抑えるなら、リスボン以外の中規模都市〜地方都市がおすすめです。記事で取り上げた代表例と特徴は次のとおりです。
- ポルト:
- リスボンより家賃・外食費が一段安い
- 大学・企業が多く、仕事や教育の機会も比較的豊富
-
「コストと利便性のバランス」が良い
-
コインブラ:
- 大学都市で学生向け物件も多く、家賃が抑えやすい
- 家賃600ユーロ前後からの1ベッドルームもまだ見つかる
-
食費も比較的安く、家族連れにも人気
-
ブラガ:
- 若い世代が多く住む中規模都市で、家賃はリスボン・ポルトより安い
-
「首都圏の半分〜3分の2程度」の住居費で済むケースがある
-
アルガルヴェの非観光エリア:
- 観光地から少し離れた街なら、冬場の家賃が抑えめ
- ただし観光シーズンは値上がり・物件不足に注意
Wise やポルトガル統計局のデータからも、家賃が生活費に与えるインパクトが最も大きいことが分かっています。費用重視なら、
- リスボン中心部を避ける
- 中規模都市(ポルト・コインブラ・ブラガ)を優先して検討
- まずはシェアハウスや郊外物件で固定費を抑える
というステップで候補地を絞り込むと、月あたり数万〜10万円前後の差が出やすくなります。
Q3. 生活費のうち、一番節約効果が大きいのはどの項目ですか?
ダントツで「住居費(家賃)」です。 次いで「教育費(子どもがいる場合)」、その次に「外食・娯楽費」が続きます。
記事中の試算からも、夫婦+子ども1人の場合:
- リスボン中心部2LDK:家賃 1,200〜1,600ユーロ(約20〜26万円)
- 地方都市2LDK:700〜1,000ユーロ(約12〜17万円)
と、同じ国の中でも家賃だけで月8〜10万円近く差が出ることがあります。
節約優先で見直す順番は、次のようなイメージです。
- 住居費:
- リスボン→ポルト/コインブラなどへ拠点を変える
- シェアハウス・ルームシェアで個室を借りる
- 家具付き物件を選び、初期投資も抑える
- 教育費(子どもがいる場合):
- 公立校+日本語補習校/現地語塾の組み合わせを検討
- インターナショナルスクールの「学費+送迎コスト」が本当に必要か再検討
- 外食・カフェ代:
- 自炊中心+週1〜2回の外食に絞る
- カフェ利用を「1日1回まで」などマイルールで抑える
一方、食材の自炊コストや通信費は元々そこまで高くないため、極端に削っても全体への影響は限定的です。「どの項目を削ると、月トータルでいくら変わるか」を意識して優先順位をつけると、無理のない節約がしやすくなります。
Q4. 生活費以外に、移住前にどれくらいの初期資金を用意すべきですか?
記事で整理した通り、単身でも100万円前後、家族帯同なら150〜200万円程度を目安に準備しておくと、想定外の出費にも対応しやすくなります。主な内訳は次のとおりです。
- 航空券・渡航費:
- 1人あたり片道10〜20万円前後(時期・航空会社により変動)
- 国際引越し費用:
- 荷物を絞っても10〜30万円程度が多い
- 住居初期費用:
- 敷金(デポジット)2〜3カ月分+初月家賃
- 家賃1,000ユーロの物件なら、少なくとも約50万円前後
- ビザ申請・行政手続き:
- 申請料・書類取得・翻訳・認証・郵送などで1人あたり5〜15万円
- 生活立ち上げ費(家具・家電・日用品):
- 家具付き物件:5〜10万円
- 家具なし物件:10〜30万円
これに加え、現地到着後3〜6カ月分の生活費(家賃+生活費)を別途現金・預金で確保しておくと安心です。日本の総務省「家計調査」でも、予備費や貯蓄が家計の安全網として重要な役割を果たしていることが示されています。ポルトガル移住でも同様に、「毎月の生活費」とは別枠でまとまった資金を用意しておくことが、計画倒れを防ぐポイントです。
Q5. 老後に年金でポルトガル暮らしをする場合、生活費の目安は?
老後の「年金+資産取り崩し」で暮らす場合、地方都市であれば単身で月1,200〜1,500ユーロ、夫婦で月1,800〜2,300ユーロ程度を見ておくと、無理のない水準になりやすいです(1ユーロ=160〜170円で、日本円にして約20〜40万円)。
目安の内訳イメージ(地方都市・夫婦2人):
- 家賃:700〜900ユーロ(郊外の1〜2ベッドルーム)
- 食費:350〜450ユーロ(自炊中心+週1外食)
- 光熱費・通信費:150〜200ユーロ
- 交通費・日用品:150〜200ユーロ
- 医療・保険・娯楽など:200〜300ユーロ
合計:おおむね1,800〜2,000ユーロ前後
これに対し、日本側の公的年金平均受給額や総務省の家計調査で示される高齢夫婦無職世帯の平均支出(約25〜28万円前後)がひとつの比較材料になります。日本の年金だけでこの水準を賄えるか、足りない分をどの程度資産取り崩しや私的年金で補うかを、為替レートも含めて試算する必要があります。
また、ポルトガルでは公的医療(SNS)を利用すれば自己負担は比較的小さい一方、待ち時間を避けるための私立医療+民間保険には毎月追加のコストがかかります。老後移住では、
- 医療費・介護費の将来的な増加
- 為替レート悪化による生活費の実質的上昇
を見越して、「年金収入+毎年の取り崩し額」が生活費の120〜130%程度になるよう余裕を持った資金計画を立てておくと安心です。
Q6. 現地の物価上昇(インフレ)は生活費にどの程度影響していますか?
ポルトガルも他のEU諸国と同様、この数年インフレの影響を受けています。EU 統計局(Eurostat)の調和消費者物価指数(HICP)によると、2022〜2023年にかけてエネルギー・食品を中心に物価が上昇し、ポルトガルのインフレ率は一時 8%前後に達しました。その後は徐々に落ち着きつつありますが、家賃・光熱費・外食を中心に「じわじわ効いている」状態です。
生活費への主な影響は次のとおりです。
- 家賃:
- 特にリスボン・ポルトの新規契約家賃は、ここ数年で大きく上昇
- 更新時に数%〜2桁%の値上げを提示される事例も
- 食料品:
- 乳製品・肉・パンなど、日常的な食材も数年前より1〜2割高い印象
- 自炊中心ならまだコントロールしやすい
- 光熱費:
- 電気・ガス料金の上昇により、冬場の請求額が以前より増えやすい
インフレを踏まえて移住計画を立てる際は、
- 毎年2〜3%程度の「物価上昇」を見込んで生活費を試算する
- 年金や資産運用がインフレに対してどれくらい防御力を持つか確認する
- 固定費(家賃・通信・保険など)の見直し余地を定期的にチェックする
といった工夫が有効です。「今の相場」でギリギリ成り立つ計画ではなく、2〜3年後の水準でも余裕があるかを基準に考えると、インフレの影響を吸収しやすくなります。
Q7. ポルトガル語が話せないと、生活費は割高になりますか?
ポルトガル語が話せないこと自体が「直接的に物価を上げる」わけではありませんが、結果的に生活費が割高になりやすい要因にはなります。
想定される影響は次のようなものです。
- 家探し:
- 英語対応の不動産会社・ポータルサイトに頼ると、手数料や家賃設定がやや高めの物件に偏りがち
-
ポルトガル語の募集情報(地域掲示板・Facebookグループなど)までアクセスできると、相場より安い物件を見つけやすい
-
日常の買い物:
- チラシやアプリの割引情報、まとめ買いプロモーションを読み取れないと、特売品を逃しがち
-
市場(メルカド)での値段交渉や、地元の格安店情報を拾いにくい
-
行政・公共サービス:
- 公共交通の割引パス、低所得者向け電気料金プラン、図書館・公民館の無料サービスなど、ポルトガル語前提の案内にアクセスしにくい
- 結果として「全部民間サービスでお金を払って解決」しがち
逆に、簡単なポルトガル語でも使えるようになると、
- 地元スーパー・市場・ディスカウント店を使い分けられる
- 行政の補助制度や公共サービスを活用しやすくなる
など、情報格差による「見えない生活コスト」を抑えやすくなります。 完全な流暢さは不要でも、買い物・挨拶・簡単な質問ができるレベル(A1〜A2程度)を目指しておくと、生活費のコントロールもしやすくなります。


