「老後は日本ではなく、物価が安くて気候の良い国で暮らしたい」と考える人の間で、ポルトガルが有力候補として注目されています。本記事では、ポルトガル老後移住のメリット・デメリット、ビザの種類と取得条件、生活費の目安、住居探しのポイント、手続きの流れ、移住者の声までを整理します。東南アジアとの比較や、日本の年金・医療との関係も含めて紹介し、老後移住で後悔しないための判断材料を提供します。
老後移住先としてポルトガルが注目される理由

EUで定年後に移住したい国No.1の評価
ポルトガルは近年、「老後に暮らしたい国」として欧州で名前が挙がることが増えました。国際調査でもその傾向ははっきりしており、移住者向けネットワーク InterNations の “Expat Insider 2022” では、「移住に最適な国」総合ランキング4位、生活の質部門5位という高い評価です(InterNations, Expat Insider 2022)。同レポートでは、
“Portugal continues to do well for quality of life, especially for climate, safety, and healthcare.”
(ポルトガルは、気候・治安・医療などの点で生活の質が高い国として引き続き高評価を得ている)
と説明されており、老後の安心感につながる条件がそろっていると分かります。
欧州内でもリタイア世代の移住先として人気が高まっています。欧州委員会の人口統計(Eurostat, Population on 1 January by age, sex and country of birth)によると、ポルトガル在住外国人のうち60歳以上の割合が年々増加しています。観光目的の短期滞在ではなく「老後の長期滞在・移住」を選ぶ人が増えていることを示すデータです。
OECD の “Pensions at a Glance” では、ポルトガルは医療費の自己負担が比較的低く、公的医療システム(SNS: Serviço Nacional de Saúde)へのアクセスも良好とされています。高齢期は医療ニーズが高まりやすいため、
「所得水準がそれほど高くなくても、公的医療で基本的なケアを受けやすい」
という制度は、年金生活を前提とした老後移住では大きな安心材料です。
このように、国際調査での評価、外国人高齢者の増加、医療制度の整備という「数字で確認できる要因」がそろっている点が、ポルトガルが老後移住先として注目される理由の一つです。
日本人に親しみやすい国民性と生活環境
数字だけでなく、暮らしやすさの面でもポルトガルは日本人シニアに向いた要素が多くあります。外務省の「海外安全情報(ポルトガル)」では、ポルトガル人の国民性について、
「穏やかで親切な国民性であり、日本人に対しても好意的である」
と説明しています(外務省『ポルトガル基礎データ』)。16世紀からの交流史や長崎・マカオを介した貿易の記憶もあり、日本に関心を持つ人も少なくありません。
ソーシャルQ&Aサービス「Yahoo!知恵袋」でも、ポルトガル在住者や長期滞在経験者から、
「とにかく人が親切で、つたない英語でも一生懸命理解しようとしてくれる」
「アジア人だからといって特別な差別を感じたことは少ない」
といった声が複数寄せられています(Yahoo!知恵袋「ポルトガル移住」関連スレッドより)。個々の体験談ではあるものの、現地の空気感を知る手掛かりになります。
食生活の面でも、日本人シニアにとってなじみやすい点があります。ポルトガルは大西洋沿岸に長い海岸線を持ち、OECD の漁業統計でも一人当たりの魚介類消費量が多い国の一つとされています(OECD Fisheries and Aquaculture Data)。Yahoo!知恵袋では、ポルトガル在住日本人から、
「魚介類が豊富で、日本風の食事にしやすい」
「干しダラ(バカリャウ)、イワシ、タコなど、日本人が好きな食材が安く手に入る」
といったコメントも見られます。年を重ねるほど「慣れた味」を再現できるかどうかは、心身の健康に関わる要素です。
Numbeo の Cost of Living データベースによると、リスボンやポルトの生活費は東京に比べて総じて低めで、外食費や公共交通費が特に抑えられる傾向があります(Numbeo, Cost of Living Comparison: Lisbon vs Tokyo)。老後資金を大きく減らさず、ほどほどの物価水準で暮らせる点も魅力です。
温暖な気候と豊かな自然・歴史文化
気候は老後の暮らしやすさを左右する大きな要素です。ポルトガル気象海洋庁(IPMA: Instituto Português do Mar e da Atmosfera)のデータによると、首都リスボンの年間平均気温は約17℃、冬(1月)の平均気温は10〜11℃、夏(8月)は23〜24℃程度となっています(IPMA, Climate Normals 1991–2020)。同データでは、
「リスボンは地中海性気候に属し、冬は比較的温暖で雨が多く、夏は乾燥して穏やかに暖かい」
と説明されています。日本のような蒸し暑い梅雨や体に負担のかかる猛暑日は少なく、関節痛や心疾患を抱えるシニアにとっても過ごしやすい環境です。
北部のポルトはリスボンよりやや涼しく、IPMA のデータでは夏でも平均最高気温が25〜26℃前後にとどまる年が多いとされています。現地在住者のブログやSNSでも、
「真夏日でも30℃を超えない日が多く、日本のような酷暑はほとんどない」
という体感レポートが多く、「暑さに耐える夏」というより「外で過ごすのが気持ちいい夏」と表現されています。
自然と歴史文化の豊かさも、リタイア後の時間を充実させる要素です。ユネスコ世界遺産リストでは、ポルト歴史地区、リスボン近郊シントラ、コインブラ大学など、ポルトガルには17件以上の世界遺産があります(UNESCO World Heritage Centre, Portugal)。ユネスコは、
“Portugal’s historic sites bear exceptional testimony to the interchange of human values over time.”
(ポルトガルの歴史的遺産は、長い時間を通じた人類の価値の交流を特別に物語っている)
と評価しており、都市ごとに異なる表情を持つことが分かります。
国土交通省の「二地域居住等の最新動向について」では、農山漁村への滞在を行う人の約4人に1人(24.7%)が「自然環境が豊かな場所に行きたかった」と答えたと報告されています。一方、日本国内の海沿い移住では、塩害や自然災害リスク、住宅の維持費増加といった課題も指摘されています(同資料および内閣府「高齢者の経済生活に関する調査」)。
ポルトガル沿岸部も潮風が強い地域はありますが、地震や台風が多い日本と比べると自然災害リスクは相対的に低めです。欧州基準の建築ルールも整備されています。穏やかな大西洋と歴史ある街並みを日常風景として楽しみながら、比較的安定した気候のもとで暮らせる点は、多くのシニアにとって「理想の老後像」に近い環境と言えます。
ポルトガル老後移住のメリット

物価の安さ:日本より低い生活コストで豊かな暮らし
老後移住で最初に気になるのは「年金や貯蓄でどれだけ余裕を持って暮らせるか」という点です。ポルトガルは、西欧の中では生活コストが比較的低く、日本の大都市圏と比べても支出を抑えやすいと言われます。
国際送金サービス Remitly は、世界各国の生活コスト比較記事の中で、リスボンについて「西欧の中では家賃・外食費が抑えめで、年金生活者にも人気」と紹介しています(Remitly, “Cost of Living in Portugal”)。在外邦人向け保険を扱う insurance110 も、ポルトガル移住の解説ページで「東京と比べて家賃・食費ともに安く、ローカルなスーパーや市場を使えば生活費をかなり抑えられる」と説明しています。複数の一次情報で「生活コストの低さ」が共通して挙げられています。
不動産情報サイト・セカイプロパティ(SEKAIPROPERTY)は、老後の海外移住についてまとめた記事で、
「老後資金に限りがある場合、住居費や生活費が安い国を選ぶことで、日本にいるよりも余裕のある暮らしが可能になる」
と指摘しています(セカイプロパティ「老後の海外移住でおすすめの国」)。ポルトガルはこの条件に合致し、リスボン中心部を外せば家賃をさらに抑えられます。地方都市や内陸部では、日本の地方都市より安い水準で長期滞在できることもあります。
光熱費や医療保険、ビザ申請コストは人によって違います。ただ、「東京での標準的な生活費と同等かそれ以下の支出で、穏やかな気候の中、ゆったり暮らしやすい」という点は、老後移住先として大きな魅力です。
EU加盟国の利点:ヨーロッパ各国へのアクセス
ポルトガルのもう一つの利点が、EU加盟国・シェンゲン協定加盟国であることです。欧州委員会はシェンゲン協定について、
“Schengen allows more than 400 million people to travel freely between member countries without border controls.”
(シェンゲンは、4億人を超える人々が加盟国間を国境検査なしで自由に移動することを可能にしている)
と説明しています(European Commission, “Schengen Area”)。加盟国に在住する外国人も、その恩恵を受けて近隣諸国への短期旅行を楽しめます。
長期滞在ビザや居住許可を取得してポルトガルに暮らせば、スペインやフランス、イタリア、ドイツなどへの旅行が一気にしやすくなります。移住者向けにビザ情報をまとめる insurance110 も、「EU加盟国であるため、シェンゲン圏内の他国へも短期旅行が容易」と説明しています。
老後は時間の自由度が増える一方で、体力や予算には限りがあります。日本からヨーロッパ各国へ長距離フライトを繰り返すのは負担が大きくなりますが、ポルトガルを拠点にすれば、近隣国まで数時間のフライトや鉄道・長距離バスでの週末旅行も可能です。旅行好きにとって、老後の楽しみの幅が広がる点は、他の非EU圏にはないメリットです。
治安の良さ:田舎町は日本の繁華街より安全な地域も
老後移住では、物価と並んで「安全に暮らせるか」が大きな判断材料になります。ポルトガルは世界的な治安指標でも高い評価を受けています。
国際的な平和度ランキングを公表する Institute for Economics & Peace の「Global Peace Index 2023」では、ポルトガルは世界7位に位置づけられ、「ヨーロッパでも特に平和で安全性の高い国の一つ」と評価されています(Institute for Economics & Peace, Global Peace Index 2023)。同指数で日本は9位前後であり、統計上は日本と同程度か、それ以上に治安が良い国として扱われています。
移住者の声として、Yahoo!知恵袋には次のようなコメントもあります。
「ポルトガル北部の田舎町に住んでいますが、夜も普通に一人で歩けますし、日本の繁華街よりよっぽど安全だと感じます」
こうした体験談は統計データを裏づけ、「観光客が多いエリアを避ければ、落ち着いた環境でのんびり暮らせる」というイメージを具体的にしてくれます。
スリや置き引きなどの軽犯罪はゼロではなく、リスボンやポルトの観光地では基本的な注意が必要です。それでも、世界的な指標と現地在住者の証言を合わせて見ると、「日本の地方都市と同じか、それ以上の安心感で暮らせるエリアが多い」と言えます。治安の良さは、日々の外出や散歩、カフェ通いといった日常の楽しみを、年齢を重ねても続けやすい環境につながります。
ポルトガル老後移住のデメリットと注意点

言語の壁:ポルトガル語習得の現実
ポルトガルは英語が通じやすい国として紹介されることが多いものの、老後移住という前提では「ポルトガル語がどの程度必要か」を現実的に考える必要があります。
日本のメディアが海外移住の実態を扱う中でも、医療・行政・近所付き合いなど生活の中核部分では現地語が重要になる、という指摘が繰り返しなされています(現代ビジネスなどの海外移住記事)。観光地のレストランやホテルで英語が通じても、役所・病院・地元スーパーなど日常の場面ではポルトガル語が中心になる場面が多くなります。
ポルトガル政府統計局(INE)の調査でも、英語が堪能な人の割合は若い世代に偏っています。地方部や高齢者層では英語が通じにくい傾向があるとされます。老後移住で関わる機会が増えるのは、むしろ同年代以上の現地住民であり、この点は軽視できません。
ポルトガル移住者の体験談では、「銀行窓口や役所では英語が通じず、通訳を頼んだ」「賃貸契約書や各種同意書がすべてポルトガル語で、不安だった」といった声が見られます(insurance110 の現地レポートなど)。ここから分かるのは、
観光レベルの英語では、生活インフラに関わる手続きで詰まりやすい
という現実です。
老後移住では、若い時期のように「現地で何とか覚えればいい」という勢いだけでは乗り切りにくくなります。特に、
- 薬の説明書や検査結果の内容
- 賃貸契約・売買契約の条件
- 年金・税金に関する通知書
といった「意味を取り違えるとリスクが大きい書類」がポルトガル語で届きます。少なくとも、
- 生活に必要なフレーズを事前に学んでおく
- 通訳・翻訳サービスや日本語対応の現地コンサルを確保しておく
といった準備をしておかないと、「思ったより不安が大きい」「結局、日本語が通じる範囲から出られない」という状況になりかねません。
官僚主義:手続きの煩雑さと時間のかかるビザ申請
ポルトガル移住のデメリットとして、複数の一次情報が共通して挙げるのが「官僚主義」と手続きの遅さです。送金サービス大手 Remitly の移住ガイドでは、ポルトガルについて次のように説明しています。
ポルトガルは暮らしやすさで高く評価される一方、ビザや行政手続きには時間がかかり、書類のやり取りも煩雑になりがちです(Remitly, Living in Portugal Guide)。
insurance110 でも、ポルトガル移住のデメリットとして「役所手続きがとにかく遅い」「担当者ごとに言うことが違う」といった在住者の声を紹介しています。具体例としては、
- 滞在許可(居住カード)の更新に数か月かかる
- オンライン予約が取りづらく、窓口に行っても当日受付してもらえないことがある
- 必要書類の案内が不十分で、何度も出直すことになる
といったケースが報告されています。
老後移住では、この「待たされる時間」が精神的な負担になりやすくなります。ビザ・税務・健康保険の手続きが遅れると、
- 銀行口座が開けない、クレジットカードが作れない
- 健康保険カードの発行が遅れ、医療費を全額自己負担する期間が生じる
といった実害も起こりえます。「のんびりした国民性」で片付けられない場面も出てきます。
国土交通省の「二地域居住等の最新動向について」では、日本国内の地方移住でも「生活拠点にかかる費用が負担となった」と感じる人が18.1%いたと示されています。海外移住では、ここに「ビザ・行政手続きの不透明さ」が加わるため、想定外の出費や時間的ロスがより大きくなりがちです。
老後移住を検討する段階で、
- ビザ申請から居住カード取得まで最低でも半年以上かかる前提でスケジュールを組む
- 現地の行政手続きに詳しい弁護士・会計士・ビザコンサルに依頼する費用を、あらかじめ予算に入れておく
といった対策を取っておくと、「手続きのストレスでポルトガルが嫌になる」事態を減らせます。
医療システム:日本の水準との違いと緊急時の対応
老後移住で最も慎重に検討したいのが、ポルトガルの医療体制です。Yahoo!知恵袋でポルトガル移住に関する質問に答えた在住者は、
最大の問題は医療だと思います。軽い風邪や検査なら良いのですが、日本語で緊急医療を受けるのはほぼ不可能で、その点は覚悟が必要です(Yahoo!知恵袋「ポルトガル移住」関連の回答)。
と明言しています。
ポルトガルには国民保健サービス(SNS)があり、EU内では「比較的良好な公的医療制度」と評価されることも多くあります。ただ、老後移住の目線で見ると、いくつか押さえておきたい違いがあります。
ポルトガルの公立病院は待ち時間が長く、専門医の予約が数か月先になることも珍しくありません。保健医療に関する欧州委員会の報告書でも、ポルトガルは「待機時間の長さ」が課題として挙げられています。特に高齢者にとっては負担になりやすいと言えます。また、
- 夜間・休日の救急外来が混雑しやすい
- 英語が通じる医師・スタッフと、そうでない人の差が大きい
といった点も、緊急時の不安材料です。
insurance110 では、ポルトガルを含む欧州移住のデメリットとして、
日本と同じレベルで、いつでも日本語で説明を受けながら医療を受けられる環境は期待しない方が良い
と強調しています。健康なうちは問題を感じにくくても、
- 心筋梗塞や脳卒中など、秒単位の判断が必要な場面
- がんや難病の診断など、治療方針を日本語でじっくり相談したい場面
では、日本と同じ安心感を得るのは難しいのが現実です。
日本国内でも、内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」によると、25.5%の高齢者が老後の備えとして「住まいに関する備え(住宅の確保やリフォーム、修繕など)」を挙げています。これは「医療や介護にアクセスしやすい住環境」を重視する人が多いことを示します。ポルトガル老後移住では、住まいの心地よさに加えて、
- 日本語が通じる医療機関までの距離
- 緊急時に頼れる人・サービスの有無
も合わせて考える必要があります。
現実的な対策としては、
- 日常的な診療・検査はポルトガルで受け、重大な手術や精密検査は「一時帰国して日本で受ける」と割り切る
- 日本の健康保険や介護保険の資格を、可能な限り維持する方法を検討する
- クレジットカード付帯ではなく、長期滞在に対応した海外医療保険や現地民間保険にしっかり加入する
といった方法が考えられます。
「いざとなれば日本に帰る」という逃げ道を最初から設計しておくことで、医療リスクへの不安が和らぎ、ポルトガルでの日常を楽しみやすくなります。一方、「一生ポルトガルで完結させる」と決め打ちしてしまうと、病気やけがをきっかけに移住そのものが重荷になりかねず、慎重な検討が欠かせません。
老後のポルトガル移住に必要なビザの種類と条件

老後のポルトガル移住では、観光ビザ(シェンゲン短期滞在)では90日までしか滞在できません。年単位で暮らすには長期滞在ビザと滞在許可(residence permit)が必須です。ポルトガル政府は年金生活者やリモートワーカー向けのビザ制度を整備してきましたが、ここ数年は制度改正が続いています。「最新の公式情報を参照しながら準備する」姿勢が欠かせません。
ポルトガルのビザ・滞在許可制度の一次情報は、主に次の2つが基準になります。
- ポルトガル外務省(Ministry of Foreign Affairs)の公式ポータル「Portal das Comunidades Portuguesas」
- ポルトガル移民局・国境管理局(AIMA/旧SEF)
2024年時点では、長期滞在ビザの一覧や要件は「vistos.mne.gov.pt」にまとめられています。外務省は観光以外の長期滞在について「A visa is required for stays in Portugal longer than 90 days」【ポルトガル外務省:National Visas】と明記しています。老後移住で実務的な選択肢になるのは、主に次の2種類です。
- D7ビザ(受動的所得ビザ/Passive income visa)
- ゴールデンビザ(投資活動による滞在許可:Autorização de Residência para Atividade de Investimento)
以下では、老後移住との相性が高いD7ビザを中心に、ゴールデンビザの最新状況も整理します。
D7ビザ(受動的所得ビザ):年金生活者に最適な選択肢
D7ビザは、ポルトガル外務省が「Residence visa for retirement, religious purposes, or for holders of income」と定義するビザです【Portuguese Ministry of Foreign Affairs:D7 Visa】。給与ではなく年金や投資収入など「安定した受動的収入」を持つ人の長期滞在を想定しています。日本の年金受給者や家賃収入・配当収入があるリタイア組にとって、最も現実的なルートです。
収入要件(最低ラインの目安)
ポルトガル政府は、D7の申請条件として「申請者と家族の生活費を賄える安定した収入」を求めています。外務省は英語版ガイドラインで「proof of means of subsistence as defined by law」【vistos.mne.gov.pt:National Visa D7】と規定しています。
実際の金額は法律上「ポルトガルの法定最低賃金」を基準にしており、移民局(AIMA)の案内では、次のような1年分の最低額で計算する運用が一般的です。
- 主申請者:ポルトガルの最低月給(Salário Mínimo Nacional)の12か月分
- 配偶者:主申請者の50%
- 18歳未満の子ども:1人あたり主申請者の30%
2024年のポルトガル法定最低賃金は月820ユーロです【ポルトガル政府:Decreto-Lei n.º 109-B/2023】。これを基準に計算すると、目安は次のようになります。
- 単身:820ユーロ×12か月=9,840ユーロ/年(約110万〜120万円台、為替により変動)
- 夫婦:9,840ユーロ+(9,840ユーロ×50%)=14,760ユーロ/年
この「最低賃金×人数分」はあくまで下限です。外務省や大使館は、申請時には最低ラインをやや上回る収入・預金があるほうが望ましい、と案内することが多くあります。日本のポルトガル大使館も、ビザ案内で「the consular service may request additional documents it deems necessary」【Embassy of Portugal in Tokyo:Visa for Residence】と明記し、必要に応じて追加の資産証明を求めるとしています。
年金生活者がD7を目指す場合は、
- 公的年金・企業年金などの年間見込額
- 円→ユーロ換算後に、上記の最低ラインを安定して上回るか
- 運用資産・預金残高で、為替変動や物価上昇に備えられるか
といった点を確認しておくことが重要です。
申請資格と必要書類の概要
ポルトガル外務省のD7ビザ案内では、申請者に求められる条件として主に次が挙げられています【vistos.mne.gov.pt:Residence Visa for holders of income】。
- ポルトガル国外から申請すること(日本在住者は東京のポルトガル大使館など)
- 犯罪歴証明書(no criminal record)の提出
- 申請者と同居家族の生活費を賄える収入・資産の証明
- 滞在期間をカバーする医療保険(health insurance)
- ポルトガルでの居住地に関する証拠(賃貸契約書など)
日本から申請する際の必要書類は大使館が案内するリストが基準です。一般的には次のような書類が求められます。
- パスポート
- 申請書類一式(ビザ申請書、顔写真など)
- 年金証書・年金見込額通知、または配当・家賃などの入金証明
- 銀行残高証明書(ユーロ換算が可能なもの)
- 日本の警察発行の犯罪経歴証明書
- ポルトガル滞在中をカバーする医療保険加入証明
- ポルトガル国内での住居に関する書類(賃貸契約・仮予約契約など)
日本語の公的書類はポルトガル語、または英語への翻訳とアポスティーユ(Apostille)が必要になることが多く、外務省も「Documents issued abroad must be legalized and translated when necessary」【vistos.mne.gov.pt:General documentation】と説明しています。準備には時間がかかるため、申請希望時期の3〜6か月前から逆算して動くのが現実的です。
ゴールデンビザ:投資による永住権取得の概要
もう一つの代表的なルートが、通称「ゴールデンビザ」と呼ばれる投資活動による滞在許可です。ただ、こちらは2023年に大きな制度変更がありました。ポルトガル政府は2023年10月施行の法律(Lei n.º 56/2023)で、ゴールデンビザの不動産投資ルートを廃止し、
“residence permits for investment activity (ARI) no longer allow real estate investment as a qualifying activity”
と明記しました【Portuguese Government, Portugal.gov.pt】。
その結果、これまで主流だった、
- 一定額以上の不動産購入によるゴールデンビザ取得
というルートは、新規申請では使えなくなりました。2024年以降、公式ポータル(AIMAおよび外務省)の案内では、対象となる投資として次のような例を挙げています【Portugal Immigration – ARI Residence Permit for Investment Activity】。
- ベンチャーキャピタルファンド・投資ファンドへの一定額以上の投資
- ポルトガル企業への資本参加や雇用創出
- 文化・芸術活動を支援する寄付
- 研究開発(R&D)プロジェクトへの資金拠出
ゴールデンビザは一定日数以上の実滞在が不要で、5年後に永住権申請資格が得られる柔軟さから、欧州圏外の富裕層を中心に人気がありました。ただ、
- 求められる投資額が25万〜50万ユーロ以上と高額
- スキームの内容が複雑で、専門家への相談が前提
といったハードルがあります。「生活費を抑えつつ穏やかに暮らしたい」という老後移住のニーズとは必ずしも一致せず、ある程度の資産を持ち資産運用・相続も含めた長期戦略を組みたい層向けの選択肢と考えられます。多くの年金生活者にとっては、D7ビザの方が現実的です。
ビザ申請の流れと必要書類
老後移住でD7ビザを使う場合、流れとしては「日本で長期ビザを取得 → ポルトガル到着後に滞在許可証を申請」となります。ポルトガル外務省は公式サイトで長期滞在ビザについて、
“The residence visa allows the holder to enter Portugal in order to apply for a residence permit”
と説明しています【vistos.mne.gov.pt:National Visas】。つまり、ビザは「長期居住権そのもの」ではなく、「居住許可を申請するための入国許可」です。
ステップ1:日本でD7ビザを申請
- 公式情報を確認する
- ポルトガル外務省「National Visas」ページ
- 在京ポルトガル大使館のビザ案内
- 必要書類を準備する
- 年金・受動的所得の証明
- 銀行残高証明書
- 犯罪経歴証明書(取得に数週間かかることが多い)
- 医療保険加入証明
- ポルトガルでの住居に関する書類
- 大使館・領事館にビザ申請
- 多くの場合は事前予約が必要
- 申請手数料は外務省の料金表に基づく【vistos.mne.gov.pt:Fees】
- 審査
- 外務省は「up to 60 days」【National Visa processing time】を目安として示している
D7ビザが承認されると、パスポートに「4か月有効・2回まで入国可能」といった内容の長期ビザが貼付されます。このビザでポルトガルに入国し、次のステップに進みます。
ステップ2:ポルトガル到着後に滞在許可証(居住カード)を取得
ポルトガル入国後は、旧SEF(現在はAIMA)で滞在許可証の申請・面接を行います。移民局の案内では、
“Applications for residence permits must be made in person and by appointment”
とされており【AIMA – Residence Permits】、事前にオンラインで予約を取る必要があります。
滞在許可証の初回有効期間は通常2年(もしくは1〜2年)で、その後3年の延長が可能とされます【AIMA:Residence for holders of income】。合計5年合法的に滞在すると、
- 永住権(permanent residence permit)
- 条件を満たせば市民権(citizenship)
の申請資格が得られます。ポルトガル政府は2024年以降も移民関連法を見直しており、「最低滞在日数」「収入要件」などが変わる可能性があります。
D7ビザと滞在許可の手続きは、
- 要件自体は明確だが、細かい運用が変わりやすい
- 大使館・移民局が裁量で追加書類を求めることがある
という特徴があります。ポルトガル大使館も公式に「The Embassy may request additional documents and information, whenever deemed necessary」と記しています【Embassy of Portugal in Tokyo】。Yahoo!知恵袋などでも、「年金生活者向けビザはあるが制度がよく変わる」といった体験談が見られます。
老後移住を現実的な計画に落とし込むには、
- ポルトガル外務省・大使館・AIMAの一次情報を必ず確認する
- 日本円ベースの年金額だけでなく、ユーロ換算後の生活費シミュレーションを行う
- 必要に応じて、現地に詳しい行政書士・弁護士など専門家に相談する
といったステップを踏むことが望ましいと言えます。ビザ要件を丁寧にクリアしておけば、その後の住居探しや医療・税金の検討も、落ち着いて進められます。
ポルトガルでの老後の生活費と必要な資金

リスボン・ポルトの月々の生活費の目安
老後移住を考える際にまず押さえたいのが、首都リスボンと第2の都市ポルトでの毎月の生活費です。Remitly は世界各都市の生活費の目安をまとめており、ポルトガルについても家賃や食費など一般的なコストを紹介しています【Remitly, Cost of Living in Portugal】。こうした一次情報と、日本人移住者の試算を組み合わせると、老後資金計画の輪郭が見えやすくなります。
日本人の50代夫婦が書いたポルトガル移住準備の note では、「夫婦2人で月20〜25万円程度」を現地生活費の目安として試算しています【50代夫婦のポルトガル移住準備 note】。この金額には、リスボン近郊の家賃、自炊中心の食費、公共交通機関の利用、光熱費や通信費などが含まれます。日本の地方都市で質素に暮らす場合と同じか、やや安い水準と言えるでしょう。
地域差には注意が必要です。Remitly は、リスボンはポルトや他都市より家賃・外食費とも高めだと説明しています【Remitly, Cost of Living in Portugal】。同じ暮らし方でも、首都圏か地方都市かで数万円単位の差が出てきます。老後移住を現実的に考えるなら、
- リスボン中心部:夫婦2人で月22〜28万円前後
- ポルトや郊外都市:夫婦2人で月18〜23万円前後
といったレンジで試算しておくと、為替レートや物価の変動をある程度吸収しやすくなります。日本の公的年金が月20万円台前半というケースでは、年金だけで足りるのか、どの程度の資産取り崩しが必要かを、ユーロ建てでシミュレーションしておきたいところです。
住居費・食費・医療費の内訳
生活費の中で最もインパクトが大きいのが住居費です。ポルトガルの賃貸市場について、移住者向け情報サイトや現地不動産会社の情報を比較すると、リスボン中心部の1LDK(家具付きアパート)の家賃はおおむね月800〜1,200ユーロ程度が相場とされます【Remitly, Cost of Living in Lisbon / 現地不動産ポータル】。1ユーロ=160円とすると、約12.8万〜19.2万円です。東京23区の単身向けマンションと大きく変わらないか、やや割安な印象になります。
同じ条件でポルトを見ると、1LDK の家賃は600〜900ユーロとされることが多く【Remitly, Cost of Living in Porto】、日本円で約9.6万〜14.4万円ほどです。静かな環境や治安を重視しつつ中心部から少し離れたエリアを選べば、さらに家賃を下げられる場合もあります。住居費を抑えたい場合、都市圏内でのエリア選びが大きなポイントです。
次に食費です。先の50代夫婦の note では、「自炊中心なら夫婦2人で月3〜5万円程度」としています【50代夫婦のポルトガル移住準備 note】。地中海式の食材(オリーブオイル、野菜、魚介類など)を活用すれば、日本よりも手頃な価格で栄養バランスの良い食生活を送りやすいと報告しています。Remitly の生活費解説でも、ポルトガルは外食はそこまで安くないものの、スーパーマーケットの価格は西欧の中では比較的手頃だと説明されています【Remitly, Cost of Living in Portugal】。自炊派には有利な環境です。
交通費については、公共交通機関を活用することでコストを抑えやすくなります。リスボンの月額交通パスは、地下鉄・バス・トラムを含めて約40ユーロ前後とされ【Carris, Navegante Pass / Remitly 抜粋】、日本円で6,000〜7,000円ほどです。老後に車を手放したい人にとって、歩きやすく公共交通網が整った街で暮らすことは、総合的な生活費の圧縮にもつながります。
医療費については、公的医療制度(SNS)に加入すれば、診療時の自己負担は比較的低く抑えられると説明されることが多くあります。ただし、日本の公的医療保険とは制度設計が異なります。insurance110 など保険情報サイトでは、「長期滞在者・移住者は、現地公的医療に加えて民間医療保険でカバーを厚くするケースが一般的」と解説しています【insurance110, ポルトガル移住と医療保険】。民間保険の保険料も含めて医療費を月あたり1万〜2万円程度見込んでおくと、突発的な病気・けがへの備えとして現実的なラインになります。
50代夫婦が試算した移住目標額6000万円の根拠
老後移住を検討するとき、「ポルトガルで安心して暮らすには結局いくら必要なのか」という疑問が出てきます。先ほどの50代夫婦の note では、この問いへの一つの答えとして、「移住時点の目標資産額を6,000万円」と設定したプロセスが詳しく紹介されています【50代夫婦のポルトガル移住準備 note】。
同記事では、まずポルトガルでの毎月の生活費を夫婦で20〜25万円と見積もっています。そのうち日本の公的年金でカバーできる部分と、不足分を金融資産から取り崩す部分に分けて試算しています。例として、
- 生活費:月25万円(年間300万円)
- 夫婦合計の年金収入:月18万円(年間216万円)
- 年間の不足額:84万円
という前提を置き、今後25年間(65〜90歳)暮らすと仮定します。単純計算で2,100万円程度の取り崩しが必要と説明しています【50代夫婦のポルトガル移住準備 note】。ここに、為替変動リスクや物価上昇、予期せぬ医療費・介護費、帰国費用や日本への一時帰国費用などを加味し、「生活費不足分+安全マージン」を考えた結果、6,000万円という目標に落ち着いたと述べています。
この考え方は、日本国内の老後資金シミュレーションとも共通しています。国内のファイナンシャルプランナーは老後資金の目安として、「年金収入で賄えない生活費の不足分を老後期間(20〜30年)で割り戻して必要な金融資産を逆算する」手法を紹介しています【金融庁『老後の資産形成と管理』】。
ポルトガル移住の場合も、
- ポルトガルでの生活費(月20〜25万円)を現地物価ベースで見積もる
- 受け取れる年金額(月何万円か)をユーロ換算する
- 不足額×老後の想定年数+インフレ・為替・医療費の上振れ分を上乗せする
という3ステップで、「自分にとっての目標資産額」を算出していくのが実務的です。6,000万円という数字自体は家庭の状況で変わりますが、一次情報に基づく生活費の見積もりと、日本の年金制度の現実を組み合わせ、無理のない移住計画を描くことが大切です。
ポルトガルの住居探しとおすすめの居住エリア

老後移住では、仕事の通勤や子どもの学校に縛られないぶん、「どこに住むか」を自由に設計しやすくなります。その一方で、住居費・気候・医療アクセスなどを読み違えると、老後資金が圧迫されるリスクもあります。
日本国内でも、国土交通省の「二地域居住等の最新動向について」では、農山漁村で滞在する人の約4人に1人(24.7%)が「自然環境が豊かな場所に行きたかった」と答える一方、「生活拠点にかかる費用が負担となった」とする人が18.1%いるとされています【国土交通省「二地域居住等の最新動向について」】。ポルトガルでも「海辺の理想的な暮らし」に憧れつつ、住居費や維持費、医療アクセスを冷静に見極める視点が欠かせません。
Remitly の「Best Places to Live in Portugal」では、首都リスボンだけでなく、ポルトやアルガルヴェ沿岸、内陸の中規模都市まで、ライフスタイル別におすすめエリアを紹介しています【Remitly “Best Places to Live in Portugal”】。日本語のQ&Aサイトでも、「ポルトは夏でも30度を超えない日が多く、日本のような猛暑になりにくい」「地方の小さな町でも治安は比較的よく、のんびり暮らせる」といった声が複数あります【Yahoo!知恵袋「ポルトガル・ポルトの気候や治安についての質問」】。都市と地方のどちらも老後移住の選択肢に入りえます。
住まい探しについて、Remitly は「まずは賃貸から始める」「長期賃貸に入る前に、その街に短期滞在して生活感を確認する」と勧めています【Remitly “Best Places to Live in Portugal”】。老後移住でも、いきなり購入せず、1〜3か月ほどサービスアパートやAirbnb、家具付き賃貸で「お試し滞在」するのが現実的です。その間に、
- 日常の買い物のしやすさ
- 公共交通機関の本数
- 医療機関までの距離
- 夜間やオフシーズンの治安や雰囲気
を自分の足で確かめ、そのうえで本格的な賃貸・購入に進むと失敗を減らせます。
生活コストの目安として、海外移住情報サイト「SEKAIJU.com」のポルトガル物価レポートでは、リスボン中心部の家賃と日常費用について、
- リスボン中心部の1LDK賃貸:月800〜1,200ユーロ程度
- カフェのエスプレッソ:1ユーロ前後
- レストランでのランチ:10ユーロ前後
- 月額の公共交通機関定期券:40ユーロ前後
といった具体例を挙げています【世界住「ポルトガル・リスボンの物価6つの具体例」】。リスボンと地方都市では賃料に2〜3割以上の差が出ることも多く、老後資金とのバランスを見たエリア選びが重要です。
リスボン:利便性と文化の中心地
リスボンは行政・経済・文化の中心であり、ポルトガル移住の入口になりやすい都市です。Remitly もリスボンを、「公共交通機関が発達し、レストランやカフェ、文化施設が豊富で、外国人にとって生活しやすい都市」と紹介しています【Remitly “Best Places to Live in Portugal”】。
老後移住の観点では、
- 大病院や専門クリニックが集中している
- 日本やヨーロッパ各国へのフライトが豊富
- 日本人コミュニティや日本食材店を見つけやすい
といった点が安心材料です。その一方、先述の通り家賃水準はポルトガルで最も高く、SEKAIJU.com の調査でも「リスボン中心部の賃貸は他都市より割高」と繰り返し指摘されています【世界住「ポルトガル・リスボンの物価6つの具体例」】。
老後移住では、
- 最初の1〜2年はリスボンで生活基盤づくり
- その後、郊外や他都市へ住み替えて住居費を抑える
という2ステップ戦略も取りえます。郊外のオエイラスやカスカイス周辺は海に近く治安もよいとされ、リスボン中心より家賃を下げられるケースが多くあります。
ポルト:夏も涼しく物価が安い第二の都市
ポルトはポルトガル第2の都市で、ワインと歴史的な街並みで知られます。日本人向けQ&Aサイトでは、「ポルトは夏でも30度を超えない日が多く、海風もあって比較的涼しい」「リスボンより物価や家賃が安い印象」といった声が寄せられています【Yahoo!知恵袋「ポルトガル・ポルトの気候や治安についての質問」】。
老後移住でポルトを選ぶメリットとしては、
- 夏の猛暑が少なく、高齢者にも過ごしやすい気候
- 観光都市としてのにぎわいと、落ち着いた住宅街の両方がある
- リスボンより住宅費・外食費を抑えやすい
といった点が挙げられます。Remitly も「ポルトはリスボンに比べ、より手頃な生活費で同様に高品質な都市生活を享受できる」と評価しています【Remitly “Best Places to Live in Portugal”】。
具体的な居住エリアとしては、
- メトロやバスで中心部にアクセスしやすい住宅街(ボアビスタ周辺など)
- ドウロ川から少し離れた丘の上エリア(海霧や観光客の喧騒を避けやすい)
が候補になりやすくなります。医療面では、公立病院に加えて私立クリニックもあるため、持病がある場合は事前に英語対応の医療機関をリストアップしておくと安心です。
アルガルヴェ・地方都市:自然豊かでコストを抑えたい人向け
ポルトガル南部のアルガルヴェ地方や、内陸・中部の地方都市は、「自然の中でのんびり暮らしたい」「住居費を抑えたい」人に向くエリアです。Remitly はアルガルヴェについて、「温暖な気候とビーチリゾートとしての魅力からリタイア層に人気で、リスボンより住宅コストが低い町も多い」と紹介しています【Remitly “Best Places to Live in Portugal”】。
日本語のQ&Aサイトでも、「ポルトガルの田舎町は夜も静かで安全に感じる」「高齢でも暮らしやすい規模の町が多い」といった声があり【Yahoo!知恵袋「ポルトガル地方都市の治安や生活環境について」】、老後に「のんびりした田舎の町」を選ぶ道も現実的です。
ただ、国土交通省の調査が示すように、自然豊かな地域への移住では「生活拠点にかかる費用」や「住まいの維持管理費」が想定より膨らむリスクがあります【国土交通省「二地域居住等の最新動向について」】。海沿いでは塩害により建物や車の傷みが早まり、
- 住宅の修繕頻度が増える
- 車の買い替えサイクルが短くなる
など、長期的なコスト増につながる可能性があります。日本の「海が見える家」への地方移住で後悔した事例とも共通するポイントです【SGO編集部「こんなはずでは…年金月23万円・60代夫婦が『地方移住』で後悔」】。
アルガルヴェや地方都市を検討する際は、
- 大型病院までの距離と交通手段
- オフシーズンの公共交通の本数
- 日本への帰国時の空港アクセス
を確認しておきましょう。必要に応じて、「年の一部をリスボンやポルトなど都市部で過ごす二拠点生活」も視野に入れると選択肢が広がります。
内閣府の調査では、高齢者の約4人に1人(25.5%)が「老後の備えとして住まいに関する備え(住宅の確保やリフォーム、修繕など)が必要」と回答しています【内閣府「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果」】。ポルトガル移住でも「自然環境」と「住まいの維持コスト」をセットで考える姿勢が求められます。
いずれのエリアを選ぶにしても、老後移住では「まずは賃貸」「まずは短期滞在」を前提に、気候・医療・住居費のバランスを実際に確認しながら、最終的な定住先を決めていくアプローチが現実的です。
老後移住で後悔しないための事前準備と失敗事例

地方移住で後悔した60代夫婦に学ぶ:想定外の費用リスク
老後移住で多い失敗は、「生活費はシミュレーションしたが、“環境由来のコスト”までは想定していなかった」というパターンです。日本の事例ですが、ポルトガル移住でも同様の落とし穴があります。
SGO編集部が紹介する「年金月23万円・60代夫婦の地方移住」のケースでは、海が見える家に憧れ海沿いの物件を購入しましたが、塩害による外壁や車の劣化で修繕費がかさみ、想定外の出費に追い込まれたとされています【SGO編集部「こんなはずでは…年金月23万円・60代夫婦が『地方移住』で後悔」】。同記事では、自然豊かな地域への移住は人気が高い一方、実践者の18.1%が「生活拠点にかかる費用が負担になった」と回答したことも紹介されています【同上】。
ポルトガルでも、アルガルヴェなどの海沿いエリアは「年中温暖で海が近い」という魅力があります。ただ、
- 海風による外壁・窓枠・金属部分の劣化(塩害)
- 海に近いほど湿気が強く、カビ対策・断熱リフォーム費用が増える
- 別荘エリアではセキュリティ対策や管理費が高くなりやすい
といったコスト要因が重なります。「年金と貯蓄で何とかなる」と考えていると、建物の維持費が家計を圧迫し、老後資金の目減りにつながりかねません。
内閣府の「令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査」では、老後の備えとして高齢者の25.5%が「住まいに関する備え(住宅の確保やリフォーム、修繕など)」が必要だと答えています【内閣府『令和6年度 高齢者の経済生活に関する調査結果』】。ポルトガルでも、
- 「海が見える」より「修繕費も含めて一生払えるか」を優先する
- まずは賃貸で1〜2年暮らし、気候と建物のクセを体感してから購入を検討する
- 賃貸でも共益費・管理費・暖房費・除湿器などを含めた“総住居コスト”で見る
といった考え方が老後移住の防御線になります。
ポルトガル移住前に必ずやるべき現地滞在体験
頭の中だけで計画していても、実際の暮らしの「合う・合わない」は分かりにくいものです。日本国内の地方移住でも、「まずはお試し滞在を」と勧める声は多くあります。Yahoo!知恵袋でも、
実際に移住を決める前に、必ず数週間〜1カ月くらい現地に滞在してみることをおすすめします。旅行と生活は全然違いますし、スーパーや病院、役所などを自分の足で回ってみると見えてくるものが多いです【Yahoo!知恵袋・海外移住に関する投稿より要約】
というアドバイスが寄せられています。この「数週間〜1カ月の滞在」は、ポルトガルの老後移住でもほぼ必須と考えた方が良いでしょう。
老後移住の下見で確認しておきたいポイントは、例えば次のような点です。
- 季節ごとの気候:冬の湿気と寒さ、夏の日差しの強さ、風の強さ
- 日常の動線:最寄りのスーパー・ドラッグストア・薬局・病院まで歩いて行けるか
- 言語ストレス:英語がどこまで通じるか、日本語対応の医師や通訳サービスの有無
- 生活リズム:夜の騒音、隣人や周囲の生活パターン(観光地は夜遅くまでにぎやかな場合もある)
- 治安・防犯:夜間に一人で歩いたときの感覚、建物のセキュリティ
数週間滞在し、現地のスーパーで買い物をして自炊し、公共交通機関を利用してみると、「車なしで生活できるか」「この湿度や寒さに体が耐えられるか」といった感覚的な部分が見えてきます。こうした体験を踏まえ、移住先エリアや住まいの条件(階数、エレベーターの有無、医療機関までの距離など)を詰めていくと、老後移住のミスマッチを抑えやすくなります。
日本の住民票・年金・健康保険の手続きチェックリスト
ポルトガルに老後移住する場合、「現地でのビザや住居」だけでなく日本側の手続きも重要です。抜け漏れがあると、税金や年金、医療費で損をする可能性があります。最低限、次のポイントは押さえておきたいところです。
-
住民票の異動(転出届)
国内の市区町村役場で「海外転出届」を提出し、住民票を日本から抜くかどうかを決めます。住民票の有無で住民税や国民健康保険料の扱いが変わるため、税理士や市区町村の窓口で確認しておくと安心です。 -
年金(国民年金・厚生年金)の手続き
日本年金機構は、海外転出後も国民年金に任意加入できる制度を設けています【日本年金機構「日本に住所を有しなくなった(海外に居住する)場合の国民年金」】。老齢基礎年金の満額受給を目指す場合、任意加入を続けるかどうかの検討が必要になります。厚生年金受給中であれば、振込先口座を海外銀行にするか、日本の口座にするかも決めておきましょう。 -
健康保険・医療費の扱い
住民票を抜くと、原則として国民健康保険の被保険者ではなくなり、日本国内での医療費3割負担が使えなくなります。厚生労働省は、海外での治療費の一部を払い戻す「海外療養費制度」を案内していますが【厚生労働省「海外療養費について」】、これは日本の健康保険に加入していることが前提です。長期滞在であれば、ポルトガル側での公的医療・民間保険を軸に据え、日本での受診は「一時帰国時の高額治療(手術など)」に絞る、といったスタイルも検討材料になります。 -
マイナンバー・税金
住民票を海外転出にしてもマイナンバー自体は失効しません。ただし、国内源泉所得(日本の不動産所得や配当など)の扱いは変わりません。国税庁は非居住者の所得税の取り扱いについて詳しいガイドを公開しているので【国税庁「国外に居住することとなった場合の所得税」】、日本に資産がある人は事前に確認しておきたいところです。 -
日本の銀行口座・クレジットカード
長期海外滞在でも、日本の銀行口座やクレジットカードは維持できることが多いものの、金融機関によっては「海外在住者は新規口座開設不可」「住所変更が必要」などの条件があります。年金受取口座や日本への送金ルートをどうするかも含めて整理しておきましょう。
これらは一見細かい手続きですが、老後移住の失敗例では、「日本側の制度をよく理解しておらず、後から税金や保険の不利益に気づいた」というケースが目立ちます。住民票・年金・健康保険の3点については、市区町村・日本年金機構・加入している健康保険の窓口という“公式ルート”で確認しておくことが、ポルトガル老後移住の重要な下準備となります。
ポルトガル老後移住の手続きステップ:移住実現までのロードマップ

老後にポルトガルへ移住する際は、いきなり「住居探し」から始めるのではなく、税務番号 → 銀行口座 → 滞在許可 → 生活インフラという流れで進めると、手戻りが少なく済むとされています【insurance110「ポルトガル移住手続き」】。ここでは典型的なステップを時系列で整理します。
STEP1:NIF(ポルトガル納税者番号)の取得
ポルトガルで銀行口座開設や賃貸契約を行うには、まず NIF(Número de Identificação Fiscal)=納税者番号 が必要です。ポルトガル税務当局(Autoridade Tributária)が所管する番号で、ポルトガル版マイナンバーのような位置づけです【Autoridade Tributária e Aduaneira 公式サイト】。
取得方法は大きく2つあります。
- 現地の税務署(Finanças)で申請
パスポートと住所情報などを提出して申請します。EU圏外居住者は「税務代理人(representante fiscal)」の指定が必要になると税務当局が案内しています【Autoridade Tributária e Aduaneira「Representante fiscal」】。 - 在日ポルトガル大使館などを通じて申請
insurance110 などの移住サポート情報によると、日本からの事前取得も可能で、書類をそろえて大使館経由でNIFを発行してもらうケースが紹介されています【insurance110「ポルトガル移住の流れ」】。
老後移住では、短期の下見渡航中に Finanças で取得するか、日本にいるうちに専門業者や大使館を通じて取得しておくと、その後の銀行口座開設や賃貸契約がスムーズになります。NIFは将来、税務申告や医療、公共サービスの手続きでも頻繁に使うため、取得後は番号を控えておきましょう。
STEP2:銀行口座の開設
ポルトガルで家賃の支払い、公共料金の引き落とし、健康保険料や税金の支払いを行うには、現地銀行口座がほぼ必須です。Remitly も、ポルトガル生活を始めるうえで「銀行口座の開設」を初期の重要タスクに挙げています【Remitly「Moving to Portugal」】。
日本人が利用しやすい銀行として、移住者の間では Millennium BCP や Caixa Geral de Depósitos(CGD)などの国内大手行の名前がよく挙がります。開設にあたり一般的に求められる書類は次の通りです。
- パスポート
- NIF
- 住所証明(賃貸契約書、ホテルの証明書など)
- 場合によっては年金受給証明や収入証明
ポルトガル中央銀行も、口座開設時には身分証と納税者番号の提示が必要だと案内しています【Banco de Portugal「Bank accounts – opening and using an account」】。
老後移住者の場合、日本の年金や日本口座からの送金を想定し、国際送金との相性(SWIFTコードや受取手数料)も事前に確認しておくと安心です。口座開設は基本的に本人の対面手続きが必要ですが、一部銀行ではオンライン口座開設や代理人を通した手続きも案内されています。詳細は各銀行の公式サイトで最新情報を確認しましょう。
STEP3:滞在許可証(居住許可)の申請と取得
長期滞在・老後移住には、ビザ取得 → 入国 → 滞在許可証(residence permit)申請という流れが必要です。ポルトガル移民庁(2024年に SEF から AIMA に移行)は、ビザの種類に応じて「入国後に居住許可を申請し、カード形式の滞在許可証を受け取る」と案内しています【AIMA「Residence permits」】。
老後移住でよく選ばれるのは、
- 年金など安定収入を要件とする定住系ビザ(例:D7ビザ)
- 一定額の投資を条件とする投資系ビザ(制度変更が多く要最新確認)
などです。日本在住者はまず在日ポルトガル大使館・領事館で長期ビザを申請し、そのビザで入国したのち、AIMA への居住許可申請に進む形になります【AIMA「Residence visas and permits」】。
申請時には、
- パスポート
- NIF
- 収入証明(年金額、預貯金残高など)
- 住居証明(賃貸契約書や宿泊証明)
- 犯罪経歴証明書
- 医療保険加入証明
など、多くの書類が求められます。老後移住では特に「継続的な収入・資産」「住居」「医療保険」が重視されるため、この3点の証拠書類は早めにそろえておく必要があります【insurance110「ポルトガル長期滞在ビザの必要書類」】。
STEP4:現地での生活インフラ整備(医療保険・住居・言語)
滞在許可が取れたとしても、生活インフラが整わなければ「暮らす」実感は持ちにくくなります。Remitly はポルトガル移住者向けガイドの中で、銀行口座に加え「医療機関へのアクセス確保」と「言語学習」の重要性を指摘しています【Remitly「Moving to Portugal – healthcare and language」】。
-
医療・保険
ポルトガルには国民保健サービス(SNS)があり、居住者は公的医療を利用できますが、OECD の “Health at a Glance: Europe” では「一部診療の待ち時間の長さ」が課題として挙がっています【OECD「Health at a Glance: Europe」】。移住情報サイトや保険専門サイトは、老後移住者に対し民間医療保険への加入を強く勧めています【insurance110「ポルトガル移住と医療保険」】。高齢になってからの検査・手術を考えると、公的+民間の二本立てを前提にした方が安心です。 -
住居の確保
多くのビザでは申請時から「住居証明」が必要です。AIMA も居住許可の条件として、申請者がポルトガル国内に住居を確保していることを挙げています【AIMA「Residence permits – requirements」】。老後移住では、賃貸契約に加え、バリアフリー性や医療機関への距離も含めて検討することが大切になります。 -
言語・日常生活
ポルトガル語は日本人にはなじみが薄い言語ですが、政府は外国人向けポルトガル語学習プログラム(Portuguese for foreigners)を案内しています【Portuguese Government Portal「Learning Portuguese」】。将来の永住権・市民権申請の条件として一定レベルの言語能力が求められる可能性もあります。老後移住といえども、オンライン講座や語学学校で最低限の生活ポルトガル語を学んでおくことで、役所・病院・近所付き合いのストレスを減らせます。
NIF取得から銀行口座、ビザ・滞在許可、そして医療・住居・言語インフラの整備までを一連の流れとして捉えることで、「何から始めればよいか分からない」という不安を和らげられます。各ステップごとにポルトガル政府機関(AIMA・税務当局・中央銀行)や在日ポルトガル大使館など一次情報を確認しながら進めることが、老後資金と健康を守りつつポルトガル移住を実現する近道になります。
ポルトガル移住者のリアルな声:年金で暮らす老後生活の実態

実際の移住者が語るポルトガル生活のメリット・デメリット
ポルトガルへの老後移住は「年金でもヨーロッパで暮らせる国」として注目されていますが、実際の生活感は日本からは見えにくい部分が多くあります。ここでは実際に移住した日本人の体験談をもとに、年金で暮らす老後生活の実像を整理します。
コロナ禍に家族でポルトガルへ移住した日本人ライターは、現地生活について「ポルトガルは『ヨーロッパ的な文化水準』と『比較的抑えた物価』が両立している」と述べています【現代ビジネス「コロナ禍にポルトガル移住した筆者が東南アジアよりポルトガルをおすすめする理由」】。同記事では、リスボン近郊の家賃相場として「中心部を避ければ月700〜800ユーロ台で十分暮らせる物件が見つかる」と紹介されています【同上】。日本の都市部から移住した60代夫婦であれば、日本の年金収入でも現実的な金額感と言えます。
同じ筆者はデメリットとして「ポルトガル語のハードル」と「役所手続きのスピード感」を挙げ、「英語が通じる場面も多いが、役所や病院ではポルトガル語前提のことが多く、『言葉が分からないと一気に不安になる』」という感想も書いています【現代ビジネス】。老後移住では、病院・薬局・役所の場面で言語ストレスが大きくなりやすく、オンライン講座や語学学校で最低限のフレーズを用意しておくことが重要になります。
「年金だけでポルトガルに住めるか」をテーマにした個人の note では、筆者が「日本で受け取る予定の年金が月15〜18万円程度でも、『郊外で質素な暮らし』を前提にすれば、ポルトガルでの生活は十分視野に入る」と試算しています【note「年金で暮らすポルトガル生活計画」】。この note では、家賃600〜700ユーロ、食費300〜400ユーロ、光熱費・通信100〜150ユーロといった現地感覚の具体的な内訳を公開しています【同上】。「日本より外食は安いが、電気代は思ったより高い」「自炊中心の生活設計がカギ」といったコメントも添えられています。
ポルトガル在住の日本人が Yahoo!知恵袋に寄せた回答でも、「リスボン中心部は日本と変わらないか、むしろ高いくらいの家賃だが、郊外や地方都市なら年金生活者でもやっていける」「魚が安くておいしいので、自炊派にはありがたい」といった声が見られます【Yahoo!知恵袋「ポルトガル在住日本人の回答」】。同じ回答者は「車がないと不便な地域も多く、医療機関まで距離があると高齢になるほど負担になる」とも指摘しています【同上】。住むエリア選びが老後の生活満足度を左右することが分かります。
これらの実体験から整理すると、ポルトガル老後移住の主なメリットは「抑えた生活費」「温暖な気候」「魚介中心で和食に近い食文化」「適度な日本人コミュニティ」。デメリットは「言語のハードル」「役所手続きの遅さ」「医療アクセスがエリアによって大きく違う」といった点に集約されます。憧れだけで決めず、移住者が挙げる日常の「小さな困りごと」まで把握しておくことが、ギャップを減らすコツです。
東南アジアよりポルトガルをすすめる理由
老後移住と聞くと、タイやマレーシアなど東南アジアを思い浮かべる人も多いでしょう。しかしポルトガルを選んだ日本人移住者からは、はっきりした理由が語られています。
前述の現代ビジネスの記事では、著者がタイ・マレーシアなどを検討したうえで「ポルトガルに決めた理由」として、次のように述べています。
「タイやマレーシアは物価面では魅力的だったが、『長期的に子どもを育てる』『ヨーロッパ的な教育や文化に触れさせる』という視点で考えると、ポルトガルのほうがバランスがいいと感じた」【現代ビジネス「コロナ禍にポルトガル移住した筆者が東南アジアよりポルトガルをおすすめする理由」】
同記事ではさらに、「ポルトガルは EU 圏の一員として、医療やインフラの水準が安定しており、『治安面も含めて、シニア世代が落ち着いて暮らせる環境』だと感じる」と説明しています【同上】。タイやマレーシアも大都市の医療レベルは高いものの、社会保障制度の枠組みや居住権の継続性といった点では、EU加盟国であるポルトガルに安心感を覚えるシニアは多いようです。
食生活の面でも、筆者は「ポルトガルは魚介類が豊富で、塩とレモンでシンプルに焼いただけの魚料理が多い。日本人の味覚にとても合う」と強調しています【現代ビジネス】。東南アジアでも魚は食べられますが、香辛料や油を多用した料理が中心で、「毎日食べ続けると少し重たい」と感じる人もいます。一方ポルトガルでは、「タラの干物(バカリャウ)」など日本の干物文化に近い食材も多く、「年齢を重ねても胃腸に負担の少ない食事を維持しやすい」という声が note などにも出ています【note「年金で暮らすポルトガル生活計画」】。
気候面でも、同 note では「タイのように高温多湿が一年中続く環境より、ポルトガルの地中海性気候のほうが高齢者には楽だと感じる」と書かれています【同上】。夏は暑いものの湿度は比較的低く、冬も日本のような厳しい寒さは少ないため、「関節痛や持病を抱える高齢者にとっても過ごしやすい」という記述があります。
東南アジアの方が家賃や外食費はさらに安いケースもあります。ただ、「物価の安さ」だけでなく、「医療・治安・食文化・気候を含めたトータルの暮らしやすさ」で見てポルトガルを選んだ、という移住者の声は少なくありません【現代ビジネス/note】。年金での老後移住では、「どれだけ生活コストを下げるか」だけでなく、「どこなら20年、30年と無理なく暮らせるか」という視点が重要になります。
移住後の生活満足度と日本との往来
実際にポルトガルへ移住した日本人の多くは、総合的な生活満足度を高く評価しています。前述の note の筆者は、「日本での生活と比べて、経済的なプレッシャーと人間関係のストレスが大きく減った」と述べたうえで、
「年金だけで日本に住み続けるより、ポルトガルで質素に暮らしたほうが、心の余裕は明らかに大きい」【note「年金で暮らすポルトガル生活計画」】
と記しています。
現代ビジネスの記事では、「ポルトガル人は総じてのんびりしていて、こちらも肩の力を抜いて暮らせる」「公園やカフェに高齢者が多く、『年をとっても外に出て当たり前』という雰囲気がある」と、街全体の空気感をメリットとして挙げています【現代ビジネス】。老後移住では、物価だけでなく、周囲の人々のライフスタイルも生活満足度に直結します。
日本との距離に不安を感じる人もいますが、実際の移住者はどう捉えているのでしょうか。note の筆者は、「ポルトガルから日本への直行便はないが、フランクフルトやパリ、ドバイ経由なら乗り継ぎ時間込みで15〜17時間程度」と説明し【note】、「年に1〜2回の一時帰国なら、身体的にも経済的にもなんとか続けられる」と述べています【同上】。
Yahoo!知恵袋のポルトガル在住者も、「直行便がないのはたしかに面倒だが、シニア世代でもビジネスクラスやプレミアムエコノミーを使えば、年1回の帰国なら無理ではない」「LCC を使えば、ヨーロッパ各国への小旅行がしやすい」と書いています【Yahoo!知恵袋「ポルトガル在住日本人の回答」】。ポルトガルは日本から地理的には遠いものの、「ヨーロッパの中継地点」として他国へのアクセスが良く、老後に旅を楽しみたい人には魅力的な拠点になりえます。
日本人コミュニティについても、リスボンやポルトには一定数の日本人が住んでいます。現代ビジネスの記事では「日本人学校こそないが、日本人会や日本食レストランを通じて、日本語で相談できる相手は見つかる」と紹介されています【現代ビジネス】。日本と完全に切り離されるわけではなく、「必要なときに日本語で相談できる人がいる」ことは、特に高齢期の移住者にとって心強い支えになります。
総じて、実際の移住者の声から見えるのは、「ポルトガルでの老後生活は、年金ベースでも工夫次第で十分現実的で、日本との往来や日本人コミュニティも思った以上に確保しやすい」という姿です。ただし、言語・医療アクセス・ビザ更新などの課題もあります。現地在住者の note やインタビュー記事、政府・大使館サイトなど一次情報を確認しながら、「自分の年金額・健康状態・家族構成に合うか」を一つずつ検証していくことが重要です。
ポルトガル老後移住のよくある質問(FAQ)

日本の年金はポルトガルでも受け取れる?
日本の公的年金は、原則として海外居住者にも支給される仕組みです。日本年金機構は公式サイトで、「日本国内に住所がない人であっても、老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給権があれば支給される」と明記しています【日本年金機構「海外に住んでいる皆さまへ」】。ポルトガル移住後も、日本の年金を受け取ること自体は可能です。
さらに日本とポルトガルは、2012年3月1日に「社会保障協定」を発効済みです【外務省「日本国とポルトガル共和国との間の社会保障協定」】。外務省はこの協定の目的として、「年金の二重加入の防止」と「年金加入期間の通算」を挙げています【同上】。日本での厚生年金加入期間とポルトガルの社会保障加入期間を合算し、受給資格を満たせるケースがあります。ただし、どちらの国からいくら受け取るのか、税金をどこに納めるのかは加入歴や居住地などによって変わります。日本年金機構とポルトガル側の年金機関の両方での確認が必要です。
手続き面では、日本年金機構が「海外に居住して年金を受け取る人は、毎年『現況届』の提出が必要」と案内しています【日本年金機構「年金を受けている皆さまへ(海外居住)」】。現況届を出し忘れると支給が止まります。長期滞在者や永住予定の場合は、在ポルトガル日本国大使館・領事館を通じた提出方法を事前に確認しておきたいところです。
日本での課税については、国税庁が「公的年金等は、原則として居住者・非居住者を問わず日本国内源泉所得」と説明しています【国税庁「公的年金等の課税」】。非居住者になると扱いが変わる可能性があるため、住民票をどうするか、どの国の税法が優先されるかを含め、税理士や大使館に相談しながら進めるのが安全です。
ポルトガルで日本語対応の医療は受けられる?
高齢期の海外移住で最大の不安材料が「医療」だと指摘する専門家は多く、厚生労働省も高齢者の海外長期滞在では「医療体制や保険制度の十分な確認が必要」と注意喚起しています【厚生労働省「海外における医療」】。ポルトガルでも、日本語だけで完結する医療体制はほぼ期待できないのが現状です。
公的医療はポルトガル国民保健サービス(SNS)が担っており、ポルトガル保健省は「すべての居住者に対しユニバーサルな医療アクセスを提供する」としています【ポルトガル保健省/SNS 概要】。EU以外の国からの長期滞在者も、居住許可を取得すれば基本的に SNS に登録できます。ただし診察・検査・入院などのコミュニケーションはポルトガル語が中心で、都市部の一部病院で英語対応がある程度、と見ておいたほうが良いでしょう。
日本語での診療に関しては、在ポルトガル日本国大使館が公表する「医療機関リスト」に、一部病院やクリニックで日本語を解するスタッフがいるとの情報が記載されることはありますが、常設の日本語医師体制があるわけではありません【在ポルトガル日本国大使館「医療機関案内」】。リスボンやポルトといった大都市でも、「英語でのやり取り+通訳依頼」が前提になる場面が多いと考えた方が現実的です。
一方、日本政府は「海外在住の日本人のために、現地の医療機関情報を提供している」と案内しており【外務省「海外安全ホームページ 医療情報」】、大使館サイトからポルトガル国内の主な病院や緊急連絡先を確認できます。移住前には、
- 日本語・英語対応の有無
- 自分の持病に対応できる診療科が近くにあるか
- 救急搬送や入院時の支払い方法
を一つずつ確認し、必要に応じて日本語通訳付きの海外医療保険や、補償範囲の広い民間保険への加入も検討しましょう。Yahoo!知恵袋などでも、在住者から「医療がいちばんのハードル」「まず大使館に相談した方が良い」といったアドバイスが多く見られます。医療リスクを軽く見ない姿勢が重要です。
移住後に日本に戻ることはできる?
ポルトガルへの老後移住を考える際、「もし合わなかったら日本に戻れるのか」と不安に感じる人もいます。出入国在留管理庁は、日本国籍者について「日本への入国・在留に在留資格は不要」とし【出入国在留管理庁「日本人の出入国」】、長期間海外に住んでいても日本国籍を維持していれば帰国そのものは可能です。
ただし、住民登録や社会保障の扱いは変わります。総務省は住民基本台帳制度について「国外に住所を有する日本人は、原則として住民基本台帳から除かれる」と説明しています【総務省「住民基本台帳制度」】。いわゆる「住民票を抜く」と、日本の国民健康保険・介護保険の加入資格を失う形になります。厚生労働省も「国民健康保険は国内に住所を有する者が対象」と明記しており【厚生労働省「国民健康保険制度」】、完全移住している間は日本の保険証で診療を受けることはできません。
日本に戻る場合は、再度住民登録を行うことで国民健康保険や介護保険の加入資格を取り戻せます。ただし保険料は「帰国後の所得」「世帯構成」「自治体の料率」で決まります。また、長期離脱期間中は日本の介護保険の被保険者期間が空くため、将来の要介護認定時にサービス利用条件へ影響する可能性もあります。介護保険について厚生労働省は、「第1号被保険者は市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者」としています【厚生労働省「介護保険制度」】。海外居住中はこの条件から外れます。
このように、老後移住は「完全移住」か「二拠点(一定期間ごとに日本へ長期滞在)」かで、制度上の扱いが大きく変わります。帰国の可能性が少しでもあるなら、
- 住民票を抜くかどうか
- 日本の国民年金・健康保険・介護保険をどう扱うか
- 将来介護が必要になったとき、どの国を拠点にするか
を整理し、市区町村の窓口や在ポルトガル日本国大使館、社会保険労務士などに相談しておくと、「戻りたいのに制度がネックになる」という事態を避けやすくなります。
まとめ
ポルトガルは、温暖な気候や治安の良さ、比較的低い生活コストなど、老後移住先として多くのメリットを持つ国です。一方で、ポルトガル語の壁や官僚主義的な手続き、医療体制の違いなど、慎重に確認すべき点もあります。
本記事で紹介したビザの種類や生活費の目安、手続きステップ、失敗事例を参考にしながら、まずは現地での長期滞在を通じて「自分に合う老後の暮らし方か」を確かめることが大切です。そのうえで、無理のない資金計画と、帰国も含めた複数の選択肢を持つ形で移住の可否を判断していくと、老後移住での後悔を減らしやすくなります。
よくある質問(FAQ)

Q1. ポルトガルへの老後移住は、何歳くらいから準備を始めるのが現実的ですか?
老後移住を現実的な計画にするには、少なくとも5〜10年前(50代前半〜60歳前後)から準備を始めるのが目安です。
理由としては、
- D7ビザなど長期ビザの要件を満たすための年金額・資産状況の確認と調整
- ポルトガル語の基礎学習と、英語力のブラッシュアップ
- 現地の下見滞在(数週間〜1カ月)を複数回行うスケジュール確保
- 住民票・年金・健康保険など、日本側の制度変更も見越した整理
が必要になるからです。
60代半ば〜後半で「そろそろ移住したい」と思って準備を始めると、
- 体力的に長時間フライトや下見渡航が負担
- ビザ手続きの想定外の遅れ
- 持病悪化で条件が変わる
といったリスクが高まります。50代のうちに一度長期滞在してみて、向き・不向きを確かめるのがおすすめです。
Q2. 年金だけでポルトガルに住むことは可能ですか?どのくらいの年金額が目安になりますか?
単身か夫婦か、住むエリアによって変わりますが、記事中のデータや移住者の試算を踏まえると、おおよその目安は次の通りです。
- 単身・地方都市/ポルト郊外:日本円換算で月12〜15万円程度の生活費でも、質素な生活なら可能
- 夫婦・ポルト郊外/リスボン郊外:月20〜25万円前後の生活費を見込むと、ある程度ゆとり
- リスボン中心部・好立地:日本の大都市同等かそれ以上の家賃になるため、年金+資産の取り崩し前提が多い
日本の公的年金だけで暮らすには、
- 夫婦合計の年金が手取りで月20万円前後以上
- 住居をリスボン中心ではなく郊外や地方都市にする
- 外食を控え、自炊中心の生活設計にする
といった条件がそろうと現実味が増します。
ただし、医療費や一時帰国費用、為替変動を考えると、年金だけに頼らず、最低でも1,500万〜2,000万円程度の金融資産をクッションとして持っておくのが安全です。記事中の50代夫婦は、より保守的に6,000万円を目標値にしています。
Q3. ポルトガル老後移住と、東南アジア(タイ・マレーシアなど)老後移住で迷っています。どう選べばいいですか?
どちらも人気の老後移住先ですが、ポイントは「何を優先するか」です。
ポルトガルが優位になりやすい点
- 地中海性気候で高温多湿ではない:日本の猛暑・高湿度がつらい人向き
- EU加盟国・シェンゲン圏なので、ヨーロッパ諸国への旅行がしやすい
- 魚介中心で、シンプルな塩味の料理が多く、和食に近い食文化
- OECDなどの評価で、治安と医療水準の安定感が高い
東南アジアが優位になりやすい点
- 家賃・外食費など、生活コストはさらに低く抑えられる事が多い
- 日本からのフライト時間が短く、帰国が気軽
- 日本人コミュニティや日本語対応の病院が充実した地域もある
選ぶ際のチェックポイントは、
- 「物価の安さ」と「医療・治安・気候」のどちらをより重視するか
- 日本への一時帰国を年に何回くらい想定するか
- 「欧州文化の中で暮らしたい」のか、「日本人が多い安心感」を優先するのか
です。どちらも候補なら、両方の地域に1カ月ずつ滞在して比較してから決めることをおすすめします。
Q4. 老後に夫婦でポルトガル移住を考えていますが、どちらかが先に亡くなった場合のことが心配です。相続や残された配偶者はどうなりますか?
高齢期の海外移住では、片方が先に亡くなった後の生活と相続を事前に設計しておくことが不可欠です。
主な論点は次の3つです。
- どの国の法律が相続に適用されるか
- 相続は、「被相続人の本国法」や「居住地の法」が絡みます。日本国籍のままなら、日本の民法が相続の基本枠組みになりますが、ポルトガルにも相続税・不動産登記など独自のルールがあります。
-
国際相続に詳しい弁護士や税理士に、「日本にある資産」「ポルトガルにある資産」をどう分けて残すのが良いか相談しておくと安心です。
-
残された配偶者がそのままポルトガルに住めるか
- D7ビザなどで家族同伴の居住許可を取っている場合、主申請者が亡くなっても、配偶者が独自に要件(年金額や資産)を満たせば居住許可の継続・変更が可能なケースもあります。
-
一方、主申請者の収入を前提に許可されていた場合、配偶者単独で収入要件を満たせなければ、帰国も視野に入る必要があります。ビザ種別と契約内容を、事前に専門家と確認しておきましょう。
-
日本に戻る想定も含めた「二つのシナリオ」作り
- 「どちらかが亡くなったら、日本に戻る」前提なら、住民票や年金、健康保険の再加入方法を事前確認しておくことが重要です。
- 「最期までポルトガルで暮らす」前提なら、現地の介護サービスや高齢者施設、在宅医療の情報も集めておく必要があります。
いずれにしても、遺言書(日・欧のどちらで有効化するか)と、資産一覧の整理は必須です。日本とポルトガルの双方の制度を踏まえて、早めに専門家へ相談しておくと、残された家族の負担を大きく減らせます。
Q5. ポルトガル語はどの程度できれば老後移住に支障がありませんか?英語だけでも大丈夫でしょうか?
観光レベルなら英語だけでも何とかなる場面は多いものの、老後移住(長期生活)という前提では、ポルトガル語ゼロはかなり不安が大きいのが実情です。
想定するレベルごとに整理すると、
- 必須に近いレベル(最低限)
- あいさつ、数字、日付・時間
- 病院や薬局で使う基本表現(痛い場所、症状、服薬指示の理解など)
- スーパーや市場での買い物フレーズ
-
タクシー・バスでの目的地説明
-
あると格段に楽になるレベル
- 役所・銀行での簡単なやりとりの聞き取り
- 賃貸契約書や通知文の「ざっくりした内容」を自分で把握できる程度
若い世代や観光業では英語が通じやすい一方、
- 役所・公立病院・銀行窓口はポルトガル語のみのことが多い
- 地方都市・高齢者層ほど英語が通じにくい
という傾向があります。
したがって、
- 渡航前からオンライン教材や語学アプリで基礎ポルトガル語を半年〜1年学ぶ
- 現地で初心者向けポルトガル語コースに通う
- 重要な手続き(医療・契約・税務)は、通訳や日本語対応コンサルを利用する予算を組む
という三本立てで考えるのが現実的です。英語だけに頼るのではなく、「命やお金に関わる場面だけは必ずプロを挟む」と割り切った設計をしておくと安心です。
Q6. ポルトガル老後移住で、絶対に確認しておくべき「お金以外」のチェックポイントは何ですか?
老後移住では、生活費やビザ要件に目が行きがちですが、「お金以外」にも事前に必ず確認しておきたいポイントがいくつかあります。
- 気候と体調の相性
- 冬場の湿気・室内の寒さ(石造りの住宅は冷えやすい)
- 夏の日差しの強さと日中の気温
-
持病(心臓・呼吸器・関節など)との相性
-
医療アクセス
- 最寄りの救急対応病院までの距離・所要時間
- 内科・循環器・整形外科など、持病に対応できる科の有無
-
夜間や休日の救急体制の状況
-
住まいのバリアフリー・安全性
- エレベーターの有無、階段の段差
- シャワーブースや浴室の滑りやすさ
-
近隣の騒音(バル、観光客、イベントなど)
-
日本語で相談できる相手の有無
- 近くに日本人コミュニティや日本語対応の専門家がいるか
-
何かあったとき頼れる人・サービス(大使館、日本人会、移住サポート会社など)があるか
-
帰国・一時帰国のしやすさ
- 最寄り空港までのアクセス
- 年齢を重ねたときに、乗り継ぎ1〜2回のフライトを継続できるか
これらは、お金以上に生活の「続けやすさ」に直結します。資金計画のシミュレーションと同じくらい時間をかけて、現地で一つひとつ確認してから移住の最終判断をすることが、老後移住で後悔しないための大きなポイントです。


